| File.1-5 |
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どちらかと言えば物静かな性格。 知的で、紳士的…と云うのが 島の印象である。 だから俺は今迄こんな彼を見た事は無かった。 獰猛な、血に飢えた獣。 戦斗班長としての任に就き、 幾度と無く死線を潜り抜けてきた。 生命を賭けて戦い続けてきた。 そんな俺でさえ、今の島を【怖い】と思う。 彼から恐怖を感じる。 こんな事って…あるのだろうか。 身体がまるで動かない。 声すら震えていて、 コレが本当に俺なんだろうか、と 疑問を感じる位だ。 蛇に睨まれた蛙の様である。 触れられた部分から血の気が引き、 氷の様に冷たくなっていく。 怖い…。怖い……。 何度も脳裏で繰り返される。 子供の様に、怯えた叫び。 でも…咽喉の奥で引き戻され、 音になる事すら叶わない…。 本当にコイツは島なんだろうか。 俺の知っている島なんだろうか。 別人であれば、今直ぐに 俺を押さえつける腕なんか振り払って 拳を叩きこんでやれると云うのに。 島だと思うから、なのか。 反撃する気力すら湧かない。 それに…。 誤解なんだとしても、 島は俺に対して激しく怒りを表していた。 俺に裏切られたと、思っているのだろう。 平常心を保つ為。 必要最低限の事を習ったに過ぎないのに。 沖田艦長が多忙な事位、 航海班長であるなら知っている筈だ。 あんな時間位じゃなきゃ 俺も艦長もプライベートな時間は持てない。 航海班長である島なら、 そんな当たり前の事、知っていて当然じゃないか。 何を勝手に誤解して、 勝手な怒りを俺にぶつけなければいけないんだ。 餓鬼みたいな苛立ちを処理する為に 俺はお前の好敵手をやってる訳じゃないのに。 一瞬、肩の辺りから凄く鈍い音が聴こえた。 関節でも外されたかと疑ったが 其処までの痛みは生じない。 確かに、痛みは感じる。 だがそれ以外の感触が熱と共に俺を攻める。 「し…島、止め…止め、て…くれ……」 「…黙れ」 聞く耳すら持とうとしない。 先程の怒りはまだ燻ったままで 島は俺を激しく攻め立てる。 「ど…うし、て…こん…な、事…を……?」 答えは無い。 荒々しい手の動きと息遣いだけが 唯一、島の存在を主張している。 空しい。 確かに2人で居る筈なのに 心は…こんなにも、遠く離れている。 それが…苦しい……。 噛み付く様に首元を吸われるだけで 目尻から涙が溢れてくる。 悲しかった。 俺では、駄目なのだろうか。 もう…あの頃には戻れないんだろうか。 |