File.1-9

島の部屋は堅く扉が閉ざされていた。
心配そうに扉の前で立つ雪の姿を見付け
俺は慌てて駆け寄った。

「雪。…島は?」
「……」

雪は哀しげな表情を浮かべて首を横に振る。
どうやら、扉を開けてもらえなかったらしい。

一人きりの部屋で、
アイツは何を思っているのだろう?
自分を酷く責めては居ないだろうか。
心配で、不安で、仕方が無い。

「俺が島を説得してみるよ」
「古代君…」
「俺に任せてくれないか、雪」
「…そうね」

雪はゆっくりと頷き、
そっと俺の手を握ってきた。

「きっと、女の私じゃ力に成れない。
 でも…貴方なら……」
「雪…」
「島君をお願いね、古代君」
「あぁ、勿論だ」

俺は雪の手を力強く握り返し
目一杯微笑んでみせる。
心配は要らない。
俺が必ず、必ず島を立ち上がらせてみせる。
どんな事が有っても、挫けたりはしない。
そう、必ず…。

* * * * * *

扉の外から解除依頼が届いている。
また森君だろうか。
そう思い、モニターを映すと
其処には森君ではなく、古代が立っていた。

あの莫迦。
また、何をしに来たと言うんだ?
あんな目に遭わされたと云うのに
凝りもせずノコノコと。

『島。俺だ、古代だ』

モニターの古代は必死に語り掛けて来る。

『島。扉を開錠してくれ。
 お前と話がしたいんだ』

静かにモニターの古代を眺めながら
俺はまだ思案していた。
開けるべきか、それとも…。
古代はまだ
扉に備え付けて有るカメラに語り掛けている。

出来れば、今直ぐにでも開けたい。
扉を開け、古代を抱き締めてやりたい。
だが…俺にそんな資格等有るのだろうか。

『島…。俺は此処で待つ。
 お前が開けてくれる迄、何時までも待つよ…』

古代…お前は本当に莫迦だ。
どうしてそんなにも優しいんだ?
どうしてそんなに俺と話したがるんだ?

俺は、無意識の内にドアロックを解除していた。

* * * * * *

独特の解除音が耳に届く。
どうやら島は俺を部屋に入れてくれるらしい。
声が届いたと思って良いのだろうか。
いや、そんな事を気にしている場合では無い。
俺は急いで扉を開け、足早に部屋に入る。

部屋に明かりは灯っておらず、
モニターの青白い灯が島の顔を照らすのみ。

その姿がまるで死人の様にすら映り、
俺は思わず息を飲んだ。
このまま遠くに行ってしまいそうな気さえして、
俺は思わず島の腕を掴んでいた。

不安で堪らなかった。
それ程、見ているだけで辛い表情だったのだ。

[8]  web拍手 by FC2   [10]



SITE UP・2010.02.05 ©森本 樹

【書庫 目次】