| File.2-10 |
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シャワーを浴びて身支度を整えると ベッドでは既に古代が寝息を立てていた。 何だかんだと文句を言っても 仕事が減る訳じゃない。 体を動かす分には良いらしいが、 古代の場合は精神的な負担に弱い一面がある。 「疲れちまったんだよな…」 傍に腰掛け、起こさない様に配慮しながら 彼は古代の髪を優しく何度も撫でる。 「早く…先に進めれば、良いのに…」 眠る古代が返答する訳でもないが 島は優しい笑みを浮かべながら何度も頭を撫でる。 そうする事で、島もまた救われている。 最愛の弟、次郎の姿を 古代を通じて思い出せるのだから。 「……」 ふと島の表情が変わった。 滅多に見せない険しい視線が 扉の向こうの存在を射抜く。 「……」 島は古代にそっとシーツを掛けてやると 足早に扉へと向かった。 いきなり開いた扉に、流石の藪も動きが止まった。 案の定、部屋の主は恐ろしい形相で 廊下へと姿を現したのだ。 「何の用だ、藪?」 「…通り掛っただけですよ」 「嘘ならもっとマトモな物を考えろ。 俺の部屋からじゃ機関室もお前の部屋も 却って遠回りになるんだ」 「…よく、知ってますね」 「ヤマト艦内の地図は頭に叩き込んである」 相手が古代ではなく、島であれば 暴力的な解決は避けられると踏んでいた藪だったが 正直、却って島の方が性質が悪いかも知れないと この時何となく理解出来た様だった。 「何か誤解してませんか、島さん?」 「何がだ…?」 「確かに、機関室も俺の部屋も此処からじゃ遠回りだ。 だけど、俺が此処を通っちゃいけない規約は無い。 …そうですよね?」 「規約まで持ち出して、自身の行動を正当化でもしたいのか?」 「……」 「反論は無いのか?」 「…アンタは、怖い人だな」 藪の漏らした感想に、島は鼻で笑っている。 ムキになっている訳でも無い。 しかし、その殺気は充分に相手を牽制する。 穏健派で通っている島の別の顔。 古代とは別の意味で威圧感の有る表情。 「藪」 「…何ですか?」 「忘れ物だ」 島が投げつけたのは、以前に取り外した小型盗聴器。 彼は主犯が藪である事を突き止めていた。 だが、徳川機関長との事もあり 藪と二人きりになれる時期を見計らっていたのだった。 「余り下らんお遊びに付き合わせないでくれ。 こっちはそんなに暇じゃないんだ」 「……」 盗聴器は廊下に落ちたまま。 それを拾う事無く、藪は足で踏み潰すと 島を振り返ろうともせず、その場を後にした。 「これで諦めてくれれば良いが…」 事を公にはしたくない。 古代や、そして藪自身の為にも。 島は小さく溜息を吐くと、自室へと帰っていった。 |