| File.2-9 |
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こうも戦が無いと、鈍ってしまう。 腕じゃない。 腕や体力はいつも徹底的に扱いて鍛えてある。 問題は『心』だ。 適度な緊張感が維持出来ないと、 イザと云う時にスムーズな行動が取れない。 こう云う状況が、俺達戦斗班には天敵なのだ。 「良いじゃないですか、息抜きが出来て…」 「莫迦モンっ!!」 甘い戯言を口にした部下に対し、 俺は思い切り罵声を浴びせてやった。 今迄散々見て来たんだ。 戦場を舐めたが為に死んでいった奴等を。 「緊急時ってのはな、 備えてる時にだけ来るもんじゃない! 寧ろ備えて無い今みたいな時が 一番敵の付け入るチャンスになるんだ。 そんな事も解らんのか、貴様っ!!」 流石に俺の罵声には驚いたか。 古代の常套手段だからな。 普段はアイツに任せているが、 締める時は隊長の俺が締めねばならん。 「す…済みませんでした、隊長…」 「隊長の苦言、意味をちゃんと理解したんだろうな?」 山本だ。 コイツは実に良いタイミングで声を掛けてくる。 「あ…副隊長……」 「隊長はお前を失いたくないからこそ、 心を鬼にして言ってくれたんだ。 その気持ちに答える為にも お前は死んではならん」 「…はい」 『死ぬな』と云うのは実に簡単な言葉。 それ故に重みも無い。 少なくとも、俺はそう思っている。 俺達ブラックタイガー隊は 尖兵として突撃する部隊だ。 死ぬ確率も格段に高い。 俺は自分の命令一つで部下を駒にし、 死なせる為に出撃している様なものだ。 俺の気持ちは、きっと古代なら解る。 アイツの背負う背景はもっと重く、辛い。 俺では肩休めにも成れない程に。 「なぁ…山本」 「何ですか?」 「俺達は…天国に逝けるのかな? いや、地獄逝きだろうな」 「……」 「詰まらん戯言だ。聞き流してくれ」 「天国も地獄も、まだ必要無いでしょう」 「山本……」 「そんな弱気な隊長、見た事が無い。 チーフに笑われますよ」 「チーフに?」 「えぇ、いつもの逆襲で」 「そりゃ…困る……」 「でしょ?」 隊長で在る俺が陰気になってどうする。 山本のフォローが、目を覚まさせてくれた。 「有難うな、山本」 「次回出撃時でのフォロー、お願いしますよ」 「何言ってやがる。 戦場に出たらそれ所じゃないだろう?」 「確かに、そうですけどね。 でも…それ以上の事をやってのけるのが加藤隊長だ」 「よく言うぜ……」 思わず苦笑を漏らす俺を 山本は何とも温かな眼差しで見つめてくれる。 ふと、古代を心配する島の視線と同じものを感じ 俺は思わず呟いてしまった。 「やれやれ…チーフと同じかよ、俺」 |