File.2-3

「ガミラスが?」
「はい、地球連邦政府宛に
 無条件降伏の受諾を要求して来ました」
「…して、政府は」
「……」

地球防衛本部。
藤堂長官の耳に、信じられない情報が舞い込んで来たのは
ヤマトが地球を旅立って2ヶ月経った或る日の事。

「政府の決定だ。
 その分だと既に…出たのであろう?」
「政府は…大統領は……」
「……」
「無条件降伏を…受諾する、との事です…」
「…やはり、そうか」
「長官……」
「同胞を…もう、待てぬか……」
「長官…無念です……」
「私もだよ……」

報告してきた若い通信員の青年は
見るからに肩を落としている。
彼位の若い戦士達が、ヤマトには沢山乗り込んでいる。
生命を賭けて、愛する故郷の為に。

そんな彼等を、裏切ってしまった。

「御苦労だったな。下がってくれて結構」
「長官……」
「あぁ、また後で宜しく頼むよ。
 ヤマトに…旅の終わりを告げねばならないからな」
「……」
「実に…嫌な報告だよ……」
「では長官、失礼します…」
「あぁ、御苦労だった…」

唯一人残った長官室で藤堂は深い溜息を吐いた。
空しかった。
そして、歯痒かった。

「沖田よ…そして、沖田の子供達よ…。
 地球は、ガミラスの手に落ちた。
 もう…待てないそうだ……」

落胆の溜息が尽きない。
もう、立っているのさえも辛い状態だった。

「地球は…我々は…
 何時から『誇り』を捨ててしまったのだろうか…?
 勝てぬ筈だ、ガミラス帝国に…」

ヤマトがイスカンダルに向かう前日。
藤堂は沖田と交わした会話を思い出していた。

『ワシは最後まで諦めんよ。
 ワシが諦めてしまったら…
 この戦いで散った多くの魂に顔向けが出来ん』

「沖田…君は……それでも
 こんな地球を守りたいと言ってくれるだろうか?
 目先の利益に惑わされ、真意を見抜く事もせず
 誰よりも地球を愛し、戦い抜いている同胞を見捨てた。
 こんな愚かな地球人の暮らす星を……」

震える手を押さえ込みながら
藤堂は何かに耐えている事を自覚した。
何を抑えているのだろうか。
悲しみ? それとも無念?

「これは…『怒り』、だな。
 そう…私は怒っている。自分自身の不甲斐無さに。
 そして…ヤマトを切り捨てた政府に……」

ガミラスがどうしてこんな策に転じてきたのかは
誰の目にも明らかな筈である。
巧く利用すれば形勢を逆転出来たのは寧ろ自軍だった。
だが、軍人と政治家とでは考え方がまるで違う。

「何の為の連邦政府だ…。何の為の防衛軍だ。
 名前ばかり、傀儡の存在に過ぎぬ我々では…
 地球を守るなど、おこがましいだけだったのか…」

藤堂は更に何事かをブツブツと呟くと
やがて諦めも付いたのか、静かに長官室を後にした。

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SITE UP・2010.5.10 ©森本 樹

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