File.2-6

南部は一頻りの機器チェックを終了すると
通信業務を終えてゆっくりしている相原に近付いた。

「ん? どうかしました?」
「あぁ、休憩取ろうと思って」
「南部さん、本当に息つく暇も無いからな〜」
「あの戦斗班長の元じゃ、仕方有るまい」
「それならウチの航海班長も相当ですよ!」

航海副班長の太田も負けじと口を挟んできた。
少しずれた眼鏡の淵を上げ、南部が答える。

「なら、一度役目を交代してみるか。
 お前に…古代の相手、一日保つかな?」
「う…う〜ん、流石に拳骨が飛ぶと嫌かも…」
「だろう? 戦斗班長は口より先に手足が飛ぶ」
「まぁ…役目上、悠長な事は言ってられないんでしょうけど。
 それにしても古代は…暴力に訴える事が多いですね」
「話しても解らないと判断する限界点が
 俺達よりも早く到達するんだろう」
「成程……」
「しかし、随分忍耐強くなったんじゃないのか?」

意味深な南部の言葉に、相原と太田は顔を見合わせる。

「一期上の俺が知ってる位だ。
 同期であるお前達なら、古代の学生生活…
 重々承知なんだろう?」
「あ…あぁ、そう云う事ですか」
「怖かったですからね、昔の古代…」
「本当だよな、相原……」
「今なんて本当、別人みたいだ…」
「お前達にもなかなか口を聞かなかったんだろう?
 酷い人見知りか、人嫌いって聞いてたよ」
「それ、誰からですか?」
「コスモタイガー隊の山本。俺、アイツと同期だったからさ」
「へぇ…。南部さん、コスモタイガー隊とも仲良いもんな。
 成程、学生時代からの付き合いか〜」
「視力の限界が判っていたから、
 俺は砲術資格を専門に取ったんだよ」

航海が始まった時にはこんな時間など持てなかった。
冥王星開戦を乗り越え、漸く持てたと言っても良い。
過去を振り返る時間を。

「古代は演習でも絶対手を抜かないし、冗談は通じないし。
 いつも島を通訳にして用件を伝えてたんですよ」
「何だ、それ?」
「島相手なら俺達も話が出来るし…
 古代の奴も島になら普通に話してたから…」
「アイツはその頃から古代のお守りをしてたって訳か」
「笑い事じゃないですよ、南部さん!
 なぁ〜相原、結構大変だったよな?」
「そうですよ。連帯責任で直ぐ走らされましたから」
「御蔭で、ヤマトの乗組員に成れたんじゃないか。
 別クラスの奴は全て、他の船に割り振られただろう?」
「それも…そうですよね……」
「じゃあ俺達、古代の御蔭で延命出来たのかもな…」

太田がしみじみとそう呟くので
南部と相原は思わず顔を見合わせた。
直後、爆笑。

「な…何だよ、いきなり笑う事は無いだろうっ?!」
「す…済まん、済まん」
「いや…お前がその、余りにも風体と違う事を言うもんだから…」
「それ、酷いじゃないですか…南部さん!!」
「だから…済まんと謝ってるじゃないかよ」
「謝罪の念が篭ってませんっ!!」

盛り上がる3人組の微笑ましい姿を
沖田と徳川、真田はそれぞれ
何かを思いながら黙って見つめていた。

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SITE UP・2010.5.25 ©森本 樹

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