File.2-7

それは口にすると実に容易い言葉。
単語その物に大した力は無い。
だが、それが心に反映された時、
初めて人はその言葉の力を痛感する。

【覚悟】

宇宙戦士訓練学校時代、
何度も教官の口から出た言葉。
宇宙に出れば嫌と言う程解ると
教官は何度も繰り返していたが…
実際に俺がその意味を感じ取るには
まだ先の様に思っていた。

島と出会って。
こうして、共にヤマトに乗って。
それでもまだ見えてこない【覚悟】の意味。
島は…見えているのだろうか。
それともやはり、そう容易くは
見せてくれないのだろうか。
俺にはまだ、解らない。

机のボンヤリとした灯に目をやる。
島の背中がいつもより大きく感じた。
それが即ち、彼の使命の大きさであり
彼自身の【覚悟】なのではないだろうか。
何時しか島は、航海班長の名に相応しい
一人前の宇宙戦士として成長したのだろう。

俺は確かに戦斗班長ではあるが、
正直…戦場に出なければ
俺達戦斗班等ただ飯食らいに過ぎず、
役立たずの邪魔者同然だ。
オマケに基本的に血の気の多い奴等ばかりだから
下らぬ事で喧嘩をおっ始める始末。
鬱陶しい事この上無いだろう。

実際、航海班や機関室とは
かなり折り合いが悪いのも事実。
班長が仲を取り成すだけで
どうにか出来る問題でも無い。
然も…航海班長の島や機関長の徳川さんは
このような状況でも常に多忙を極める身。

つくづく俺は役に立たないと
布団の中で思わず溜息を吐く。
すると空かさず、机から咳払い。
島の奴、溜息さえも許さない気か?

「する事が無いのならば眠っていろ。
 戦斗班は体力勝負なんだろう?」
「…解ってる」
「灯が眩しければ言ってくれ」
「…気にならないから良いよ。
 それ以上灯を落としたら
 お前の視力が悪くなる……」
「……」

こんな状況でもまだ俺の事を心配する。
いつもなら有り難いと感じているのに
どうして今はこんなにも
切なく、哀しくなってしまうんだろう。
言いようの無い孤独感に駆られ、
俺はベッドを抜け出すと
そのまま背中越しに島を抱き締めていた。

「…進?」
「…このまま」
「……」
「このまま、居させてくれ。
 それだけで良いから……」

俺は艦長の様な大人には成れない。
たった一人きりで生きていけるほど
強い心を持っている訳じゃない。
人一倍寂しがり屋だし、泣き虫だ。
背伸びしたって仕方が無いんだ。
これが、俺なんだから。

戦闘が無くて不安になるのはきっと
弱い自分を直視したくないからなんだろう。

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SITE UP・2010.5.27 ©森本 樹

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