File.3-11

ヤマトを降りた俺達4人、各班の班長は
そのまま強制的に軍本部の最上階へと通された。

今更報告等、不要の筈。
若しくは…別の命令か。
それとも……。

誰も口を開こうとはしない。
何も言わない。
何も…言えない。
無言の時間。
沈黙だけが、俺達を支配する。

長官室の前で俺と島、真田さん、雪は
沖田艦長と佐渡先生の姿を確認した。
徳川さんの姿は無い。

「ヤマトの各班責任者が呼ばれた、と
 云う事ですか…」
「まぁ、そう云う事だろう」
「徳川さんは…?」
「彼には戻ってもらったよ。
 家族の、孫娘の元にな」
「だったら森君も一緒に…」
「……」

それが叶わないから…
彼女が此処に居ると云うのに。
相変わらず俺は思慮が足りない…。

「私は良いのよ、古代君」
「雪……」
「女だからと云う理由で
 責任逃れはしたくないの。
 私は列記とした生活班の班長ですもの」
「雪、君は……」

俺の後ろに立っている島は
先程から一言も話をしていない。
声一つ発していないのだ。
黙って俺達の遣り取りを見守っているだけ。

雪の悲壮な決意を知っていたからなのだろうか。
前以て、相談に乗っていたのか。
そう言えば…家族を残してと云う事なら
島は雪と同じ立場である。
しかし、彼は俺の為に此処に残った。
俺と共に居る為に。
もしかすると…雪も?

「島…。あの……」

それを確認したくて
俺は島にそっと声を掛けた。
しかし…突然開いた扉の音が
無情にも俺の声を遮り、
会話が成立する事はなかった。

そのまま無言で部屋の中へと進む俺達の姿は
宛ら『絞首台に向かう囚人』の様でもあった。

* * * * * *

「御苦労だった、諸君」

藤堂長官は幾分疲労が顔に出ていた。
意にそぐわない決定、
苦しいのはきっと…長官も同じ筈。
いや…高い役職故にその苦しみは
きっと俺の窺い知れぬ程にあるだろう。

「よく、戻って来てくれた。
 諸君等の無念、私は…
 しっかりとこの胸に刻んでいるよ」
「御気を落とされるな、長官。
 止むを得なかったんだよ…」
「沖田……」
「覚悟は…出来ているよ。
 願わくば、若い者達ではなく…
 このワシの生命で終わらせてくれんか?」
「艦長…っ!!」
「良いんだよ、古代。
 これが『艦長職』と云う物だ」
「だけど…そんな…っ!」

沖田艦長はすべて承知の上で
このイスカンダルへの航海を決めたのか?
失敗すれば自分の命を差し出して
全てを清算するつもりだったのか?

幾ら艦長とは云え、そんな事…酷過ぎる。

俺は肩を震わせたまま
沖田艦長と藤堂長官を見つめるしかなかった。

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