File.3-14

まるで旧友に語り掛ける様な優しい口調。
若き戦士達には理解し難い空気が流れている。

彼等ガミラス星人は地球人から
この母なる惑星の全てを奪い尽くした
悪鬼だと云うのに。

「貴殿とは戦場で会わずに済んで
 本当に良かったよ」
「それは…皮肉、ですかな?
 我々はこの戦争で敗れたのですぞ」
「ヤマトが破れた訳ではあるまい?」
「……」

デスラーと云う人物は
戦況や戦局を確実に読んでいたのだろう。
だからこそ彼は
『如何にヤマトの動きを止めるか』と云う
この一点に策を張り巡らせたのである。

考えに考え抜いて練られた作戦。
立場が逆であったとすれば
沖田も又、同じ手を考えた上で実行したであろう。
少ない被害で最大の勝利を掴む事の困難さを
この2人は熟知していた。
正しく『将』である。

「デスラー総統。1つ質問をしたい」
「私が答えられる範囲であれば何なりと」
「ヤマトの乗組員の処遇は…
 どうなされるおつもりか?」
「乗組員、ねぇ」
「……」
「地球連邦政府からは
 宇宙戦艦ヤマトの献上を打診されたよ。
 乗組員に対しても全て
 『好きに処分してもらって構わない』と
 言われているのだがね」
「な…っ?!」

声を荒げたのはやはり古代であった。
その直後、島は小さな声で呻く様に
「やはりそうなのか…」と呟いた。

ヤマトは見捨てられたのである。
こんな事実を突きつけられる位なら
宛ても無く宇宙を漂流していた方が
遙かに幸せだったかも知れない。

「価値を正しく理解出来ぬ者が上に居ては
 さぞかしあのヤマトも動き辛かっただろうに」

デスラーは沖田に向けていた視線を
不意に古代へと移した。

「ヤマトの全て…は流石にこの私でも
 少々荷が重くてな。
 だが…少年、お前の身柄一つならば」
「何……?」
「古代、とか言ったな。
 少年、お前は己の生命を賭けて
 母なる惑星を守り抜く覚悟は有るか?」
「俺の…生命?」
「お前の身柄を我がガミラス帝国が預かろう。
 その代わり、ヤマトと乗組員は処罰は不問にする。
 どうだ? 悪くない提案だとは思うが」
「俺が……」
「そうすればお前は誰の邪魔も受けず
 いつでもこの私の首を取る事も出来るだろう」
「!」

デスラーは古代が抱く敵討ちの思いまでも
その掌で弄んでいるかの様だ。
明らかに挑発している。
奥歯をギリギリと鳴らしながら
古代はそれでも反論出来ずに居た。
確かに、願っても無いチャンスなのだ。

「お前に切っ掛けを与えてやろう、少年」
「…良いだろう。行ってやろうじゃないか」
「後悔しても遅いのだぞ」
「…するもんか」
「古代! 待て、落ち着けっ!!」
「そうだ、古代! 島の言う通りだ。
 よく考えてから己の道を決めろ。
 コレはお前一人だけの問題では無いんだ!」
「古代君…。私達は古代君1人に
 全ての責任を押し付けたりしたくないの。
 だから…お願い、解って……」
「古代…先ずはよく考えてからじゃ、な?」

島、真田、雪、そして佐渡。
それぞれが思いを口にし、
彼の心を静めようと努めている。

古代がガミラス帝国に赴けば
もう二度と地球の地を踏む事もなく、
仲間に会って談笑する事も出来ないだろう。

再び戦渦に巻き込まれたら最期、
次に顔を合わせた時には
互いに敵として刃を向けなければならない。
そんな可能性さえ生まれてくるのだ。

「良い仲間に恵まれている様だな、古代。
 良いだろう、お前に考える時間を少しくれてやろう。
 72時間後に、我々は軍所有の宇宙港にて待つ事にする」
「俺は……」
「良い返事を期待しているよ、古代」

デスラーはふと微笑を浮かべると
そのまま従者であるタランを引き連れて
停泊している自身の艦へと戻って行った。

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