File.3-15

モノレールに乗っている間も
白い視線が気になって仕方が無かった。
軍服を着ている事がこんなに苦痛になるなど
考えた事など一度も無かったのに。
現実は時に、残酷な迄に俺達を襲う。

「気にするな」
「…大介」
「何も出来ない奴の言い草等
 俺にはどうでも良い事さ」
「……」

島は実に堂々としていた。
恥じる事無く、ヤマトの制服姿でモノレールに乗り込み
彼の視線は真っ直ぐに目的地方向へ。
しかし、さり気無く置かれた荷物や彼の腕は
俺を群集から守る様に位置取っていた。

「72時間…。3日間、だな」
「……」
「その間は、何も考えるな。
 お前は只、島家の一員として
 自由気ままに過ごせば良い」
「お前は…どうするつもりだ…?」
「さぁ、な」
「大介……」
「お前の居ない地球で、生きていく意味が有るのか?」

俺が一番恐れていた回答。
それだけは言って欲しくなかった。
だが…島 大介ならば誰よりもきっと
その言葉を発するだろう事は解っていた。
解り切っていた。

「大介…生きてくれ……」
「……」
「お前が生きているというだけで…
 俺も又、生きていける…から……」
「死ぬと決まった訳じゃない」
「大介……」
「お前も、行くと決まった訳じゃない」
「…大介、だが…それは……」
「何も考えるな」
「……」
「考えるんだったら…」

人目も憚らず、島はそのまま俺の顔を覗き込んできた。
そしてゆっくりと唇を重ねてくる。
こんな所で、大衆の面前で…キス?

「俺の事だけを考えてくれ」
「大介…」
「一分でも一秒でも長く、
 お前を独占したいんだ…」
「……」
「頼む、進…」
「大介……」

こんな表情、見た事が無かった。

いや、一度だけ…有る。
そうだ、あの時……。
俺が初めてを大介に捧げた、あの日。
致した後に見せた、あの表情だ。

心が引き裂かれる程に切なく、哀しげな瞳。
酷く不安定な面影。

もう二度と見たくないと思っていたのに。
こんな形で、又…俺は大介を……。

「泣いても、良いんだ…ぞ?」
「…進?」
「我慢しないで、泣いて良いんだ…」
「…泣けるか、こんな場所で」
「キスは出来るのに…?」
「男って奴はな」
「……」
「人前で涙を見せない生き物なんだよ」
「……そう」

相変わらず痩せ我慢をする奴だな。
だが、そんな所も好きなんだ。
全てが…島 大介の全てが好きだ。
長所も、欠点も、全て…。

どうせ掻ける恥等もう無い。
俺は思い切って島の胸元に顔を埋め
その温もりと彼の匂いを堪能した。

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SITE UP・2010.9.15 ©森本 樹

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