| File.3-18 |
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長い、長い時間が流れていく。 あっと言う間の筈なのに、 だけど…俺の中ではとても長い時間。 まるで…明けない夜の様に とても静かで、でも居心地が良くて…。 まだ昼間だと云うのに、 俺はいつの間にか眠っていた。 温かい、大介の腕の中で。 本当に安心して休める、唯一つの場所。 大介は…眠っていなかった様だ。 俺を腕枕したまま身動ぎ一つせず ただ…天井を静かに見つめていた。 その横顔がとても寂しそうで 俺は声を掛けるのを躊躇っていた。 「大介…?」 「ん…起きたのか」 「あ…あぁ」 「そうか…」 「お前は…眠ってないのか?」 「あぁ」 「もしかして、眠れなかった…?」 「いや」 「……」 「お前が眠っていた時間なんて たかだか転寝程度だ。 ものの数十分ってところだな」 「あ…そうなんだ……」 「そう云う事」 こうやって一緒に眠って居ると 大介がどれだけ俺の事を考えてくれているのかが 痛い位に伝わってくる。 何時だって、そうだった。 さも、それが当たり前と言わんばかりに。 だけど俺はそんな彼に対して 一体何が残せたと言うのだろう。 これ迄も彼は常に俺を一番と考え 随分と敵を作ってきたに違いないのに。 其処までしてくれる彼に対してさえ 俺は何も返せていないのだ。 「進」 「ん? 何?」 「お前の悪い癖だ」 「?」 「そうやって悪い方向に考えるの」 「え? 別に俺は…」 「俺には筒抜けだ」 「……」 「少しは改善した方が良い」 「…うん」 言い方は随分と素っ気無かったが 直後に抱かれた腕の力強さに 俺は心から安心出来た。 身を委ねて、静かに目を閉じる。 微かに聞こえてくる。 大介の鼓動。 彼が確かに生きているという証。 同い年なのに。 同じ訓練を経た来た筈なのに。 俺の知らないところで、 随分と大介は成長していたんだなと感心する。 広い肩幅、厚い胸板は きっと航海士としての彼の成長の証なのだ。 静かに響く鼓動に耳を預け、 俺は暫しの休息を取る事にした。 こんな風に穏やかな時間など もう二度と味わえないのだから。 それならば、意地など張らず 目一杯…大介に甘えて居たかった。 出来ればこのままずっとこうして居たい。 でも、それが叶わないのは解っているから。 ならばせめて今だけは… 今だけはこうして、 大介を俺だけの者に…独り占めにしたい。 もうこれ以上は何も望まない。 望んでも無駄だって知っているから。 地球を去る俺にとっては もう、他には何も無いのだから…。 |