| File.3-2 |
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自分の席に着いても落ち着かなかった。 当たり前だ。 俺にはもう、戻る場所なんて無い。 父さんも、母さんも居ない。 兄さんだって… この地球を守る為に戦死した。 こんな下らない人類の為に。 いっそ、皆滅んでしまえは どんなに気が晴れるだろう。 それに、俺達ヤマトの乗組員は 冥王星基地を破壊している。 地球を掌握したガミラスが 俺達を無罪放免にする筈が無い。 待っているのは絞首台だ。 「古代君……」 背後から申し訳無さそうに 数回、雪が声を掛けてきたが、 流石に答える気力すら湧いてこない。 適当に手を振り、反応を返すのみ。 済まないな、今はそれが限度なんだ。 「…島君、古代君が……」 「解ってる」 何を解っているのだか。 簡単な遣り取りだけは耳に入っていたが 後ろを向いている俺の目には 当然、2人の表情までは判らない。 「!!」 島は俺の右腕を強引に奪うと そのまま引っ張る様に俺を席から離す。 「な、何するんだ!」 「体力が有り余ってるんだろう? 俺もなんだ。 だから、付き合えよ」 「…何に?」 「ん? トレーニング」 「するだけ無駄さ」 「どうして?」 「どうしてって… もう、敵は居ないんだぜ? 鍛えた所で…」 「俺は自分自身に打ち勝つ為 トレーニングをする」 「?」 「体を動かさなければ飯も不味い。 このままじゃ不健康だ」 「……」 結局俺はそのまま なし崩しでトレーニングルームまで 付き合わされる羽目となった。 「鈍ったな、お前」 「くそ…航海班のお前に負けるなんて…っ」 「鍛錬が足りないんだよ。 もっと集中しなきゃ駄目だって事」 「解ってる…つもりなんだが……」 「学生時代は物凄かったんだぞ、お前」 「…学生時代以下か、今の俺は」 「さぁな」 確かに航海班じゃ、戦斗には関与しない分 それ程鍛える必要は無さそうだが、 こうして一緒にシャワーを浴びてると コイツの筋肉の鍛え具合には惚れ惚れする。 無駄が一切無い。 逆に、やや痩せている感じすら受ける。 ストイックな性格が起因してるのか。 「ジロジロ見るなよ」 「見えるんだ。仕方が無いだろう?」 「…そりゃまぁ、そうだが」 人の目が有るから、露骨に求められない。 それに…戦斗が無くなっても 班長職の俺達は却って忙しくなり、 此処の自由等は無きに等しくなりつつあった。 今、コイツとこうしていられる事に 俺は久々の充実感と幸福感に満たされていた。 |