| File.3-7 |
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「島」 古代の部屋へと向かう途中で 俺は加藤と山本に呼び止められた。 「あぁ、お前達か」 「チーフの具合はどうだ?」 「…余り芳しくない」 「そうか…」 「山本、済まなかったな。 お前にまで被害を与えて…」 「俺は勝手にチーフを止めに入っただけさ。 余り気にしないでくれ、と伝えてくれるか?」 「…解った。伝えておくよ」 「お前も無理するなよ、島。 目の下に物凄いクマが出来ているぞ?」 「クマ?」 「自分の顔、鏡で見てる暇さえないのか…」 確かに此処最近は 古代の部屋と第一艦橋、機関室を行ったり来たりで 満足に食事も睡眠も取っていない。 時間も無いし、取る気にもなれない。 何処かで、このままじゃ駄目だと解っているのに。 「チーフにとってはお前だけが拠り所なんだ。 …古代の為にも、もっと自分を大切にな」 「加藤……」 「先輩の忠告は、ちゃんと聞き入れておけ」 「そう云う事だ。解ったな、島?」 「山本……」 懐かしい。 あの頃に戻っている様な錯覚。 宇宙戦士訓練学校で共に汗を流した日々。 「そう。その笑顔だ」 加藤はそう言って微笑み、 優しく俺の肩に手を置いた。 「忘れるな、その笑顔を。 俺達は何時までも…お前達の仲間なんだから」 「…あぁ、有難う……」 ヤマトを降りても、俺達は変わらない。 きっと、この先もずっと…。 俺が眠っている間、島は何かを読んでいる。 机上灯の微かな明かりだけで。 あれでは視力が落ちてしまうと言うのに。 「何、読んでるんだろ?」 俺は机の上に置かれた本を手に取って見る。 それはかなり分厚い物理学書だった。 「著者…沖田 十三? 沖田艦長の書物…なんだ……」 意外だった。 元々島が読書家なのは知っている。 時間が有ればいつも 膨大な量の書物を読み漁っているし 恐ろしい事に、それらの内容を 正確に脳裏に刻み込んでいる。 だからアイツが本を読んでいる事は 少しの疑問を抱かなかった。 俺が意外だったのは… アイツが沖田さんのもう一つの顔を 知っていたと云う事だった。 俺が両親の敵討ちしか頭に無かった間 島はずっと先を見通していたんだろうか。 俺が見ようともしない、未来。 アイツの目は真っ直ぐに この現実と未来に向けられていたんだろう。 同い年とはいえ 俺とアイツは違い過ぎる。 アイツは俺よりもずっと先を歩いていて、 俺は何時か…置いてけぼりになるんだろうか。 そう思うと、無性に寂しくなった。 |