| File.4-12 |
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今迄此方からデスラーの私室に 顔を出した事は無い。 用が有ればデスラーの方が 俺の部屋を訪れていたし、 会議に次ぐ会議で 殆ど部屋に居ないと 知っていたからだ。 今回、こうして訪れても 思惑が空振りに終わるかも知れない。 以前の俺ならば失敗を恐れず 何度でも挑戦したものなのに この優遇された捕虜生活は 俺から意欲を根こそぎ 奪ってしまうかの様だ。 重々しい扉をノックすると 意外にも部屋の奥から声がした。 紛れも無い、デスラー自身の声。 「誰だ?」 「…古代だ。入っても良いか?」 「どうぞ」 ゆっくりと扉を開き、 俺は静かに部屋の中へ入った。 初めて入るデスラーの部屋は 意外にもサッパリとした内装だった。 以前見たヒスの私室よりも 余程実務的に思える位に質素で 何気無く於かれた家具が 充分過ぎる程に彼の品性を保っている。 デスラーは、と云うと 何かの書面に目を通している最中だった。 彼らしくないと感じたのは その紙が微かに薄桃色だったからだ。 「誰かからの手紙か?」 俺の不躾な問い掛けに デスラーはフフっと笑みを零した。 「娘だよ」 「娘? お前、家族が居たのか?」 「それ程意外かね」 「…娘って事は、嫁さんも居るんだろ? どうして一緒に住んでないんだ?」 「お前は戦場に妻子を伴うのかね、古代?」 「あ…」 ガミラス星人であるデスラーにとって この太陽系は正に戦場そのもの。 例え休戦状態に有るとは言え ガミラスにとって、デスラーにとって まだ戦争は終わってなどいないのだ。 垣間見えた文字はまるで記号の様で 一瞬で解読出来る様な代物じゃない。 それに、余りプライベートな問題に 首を挟む気など無い。 デスラーと手紙の主である彼の娘が 現在どう云う状況であるかすら 俺には判らないのだから。 「それはそうと」 やがてデスラーが何かに気付いた様に 此方に視線を合わせてきた。 「何か用が有ったのではないのか? お前にしては珍しく 態々この部屋を訪ねるだけの理由が」 フッと浮かべた笑みが何とも嫌味に見えて 俺は少しだけ腹に来たのだが 此処で立腹してしまっては 纏まる話もお釈迦になってしまう。 苛々を飲み込み、 俺は冷静に振舞おうと努力する。 こう云う時は直ぐに大介を思い出し 彼の優秀さを改めて実感するのだが。 「あぁ、話が有って…来た」 「ほぅ」 「大切な話なんだ」 俺はアイシァから聞いた内容を 彼女からの話である事は隠した上で デスラーに打ち明けた。 |