File.4-14

シーツが肌に触れる音。
ベッドの上で静かに横になり
人形の様にしてその時を待つ。

断首台を前にする囚人の気分なのは
相手が、最愛の存在では無いからなのだろう。

捕虜となってから幾日か過ぎたが
こうなったのは寧ろ遅かった位だ。

『大介…御免、な…。
 俺…守りたかったんだけど…。
 でも、でも…俺は……』

身体が震えている。
知らない訳でもあるまいに
まるで処女の様な立ち居振る舞いに
自分で自分が嫌になる。

『知らない事じゃない。
 恐れる事は無い。
 直ぐに終わる事だ。
 そう、直ぐに終わる事。
 だから…何も怖くない……』

恐怖感からではない。
そう思うのならば、何故震える?
…解らない。

身体の奥から感じる熱が
アイツの発する物で無い事。
それだけでも充分絶望に値する。
同時に、こんな事で
命を繋がないといけない小姓の少年を
俺は心から気の毒だと思っていた。

瞼が熱くなり、視界が霞む。
涙が流れているのだと
俺はボンヤリ感じ取った。

「何を泣く?
 お前が自分の意志で決めた事だ」

デスラーの声が耳の奥に染み込む。
そう、自分で決めた事。
だからこんなにも『悲しい』のだ。

身体は確かに感じている。
少なくともデスラーは優しかった。
だからこそ素直に
身体が感じるままに
肉欲に堕ちる事だって出来た筈なのに
俺の心がそれを許さなかった。

目を閉じて思い浮かべると
其処にはいつも大介が居た。
哀しそうな笑みを浮かべ、
俺を静かに見つめる大介の顔が
こんなにも心をかき乱す。

逢いたい。
俺は、お前に逢いたいんだ。

意識が薄らぐ瞬間
俺の唇は確かに一つの音を発していた。

【大介】と。

* * * * * *

「大介…?」

俺の呟きはデスラーに聞かれたらしい。
怪訝そうな目で俺を見下ろす。

「この様な状態で呼べるとは…
 余程お前にとっては特別な存在の様だな」
「あ……」
「何者だ?」
「……」

デスラーは自身を俺の束縛から解放すると
冷めた視線を俺に向ける。

「答えろ、古代。
 誰の名前だ?」
「……」
「黙秘権か?
 その権利を認めてやっても良いが…」

フッと鼻で笑いながら
デスラーは更に残酷な言葉を吐き出す。

「調べれば直ぐに正体は割れるであろう。
 お前の前に引き摺り出し、処刑してやろう。
 楽には死なせん。
 タップリと楽しませてもらうとしよう」
「や、止めろッ!!」

デスラーは本気だ。
このままでは本当に大介が…。
俺は全身の血が正に凍っていく様な
そんな恐怖に襲われていた。

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SITE UP・2011.10.29 ©森本 樹

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