File.4-16

俺はどれ位眠っていたんだろう?

頭が重く、視界がぼやける。
関節や筋肉が悲鳴を上げ、
咽喉はまるで妬けたかの様に痛い。

自分に何が起こったのかを悟るまで
異常に時間を経過させた。

『そうか…。俺は……』

手元に残る感触が
それを事実と確信させた。
シーツに染まった、嘗ての生物。
溶け切って、液体に戻ったのだ。

『俺は…勝ったんだろうか?
 この勝負に、賭けに……?』

思考はほぼ停止状態ながら
俺は何度も自身の心に問い掛けた。
其処に確かに存在する人物に向かって。
確かな【何か】が欲しかった。
唯、それだけだったのかも知れない。

『進…』

あぁ、聴こえてくる。
アイツの声が、俺に力を与えてくれる。
生きる力も、意志も、
その声から感じ取る
温もりによって与えられる。

『大介、俺は…負けなかった、よな?
 俺…お前を、守れた…よな?』

大介の微笑が見える。
静かに、力強く頷いてくれている。

『逢えるよ、大介…。
 俺達は必ず、逢える……』
『必ず迎えに行くからな、進』

あの時、確かに交わした約束。
今も尚、俺の原動力となって…。

『必ず、お前を…助けに行く。
 待っていてくれ、進……』
『…有難う、大介。
 俺…信じている、から……』

瞼が重い。
酷く、眠い…。
意識が、少しずつ闇に…解けて、行く……。

* * * * * *

次に意識が覚醒したのは、
何時だったろう。
心配そうに俺を見つめる二つの瞳。
見覚えのある、少女の顔。

「アイ…シァ……」
「兄様、あぁ…良かった……」
「此処、は…?」
「兄様のお部屋です。
 総統閣下が、此方の部屋迄…」
「デスラーが、自ら…?」
「…はい」
「……そう」

正直、信じられなかった。
アイシァの証言が、ではなく
デスラーがそんな事をするとは…。

少年や大介に対し
何の情も無く「処刑する」と言い捨てた
あの男が…何故……?

「デスラーは…何、って…?」
「…お体を大切にする様、と。
 それと……」
「それ、と…?」
「…『その気高い意志を大切に』と」
「……デスラー、が」
「はい……」

不思議と、その一言で俺は理解出来た。
デスラーのこの不可思議に見える言動も。
彼も又、【戦士】なのだ。
それも誇り高き、孤高の戦士。

後日、小姓を勤めていた
例の少年の処遇が発表された。
一切のお咎め無し。
それが、デスラーの下した結論だった。

「約束を、守ってくれたんだな」
「えぇ…。有難う、兄様」
「…皆の御蔭、だよ」
「え…?」
「挫けそうになった時、確かに聴こえたんだ。
 俺を励ましてくれる皆の声が。
 勿論アイシァ、君の声も」
「兄様…」
「礼を言うのは、俺の方だ。
 有難うな、アイシァ」

彼女の嬉しそうな微笑を見れた事で
俺はデスラーの言った【利】の意味を
少しだけ理解出来た様な気がした。

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SITE UP・2011.11.29 ©森本 樹

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