File.4-17

「元老院の驚いた表情の数々。
 なかなかに楽しめました」
「ふふ、そうであろう」
「しかし、宜しかったのでしょうか」
「元老院の決定を覆した事、か?」
「はい、恐れながら…」
「心配には及ばぬ」

デスラーは愛用の
ワイングラスを傾けながら
静かに目を細める。

「元老院の最近の言動。
 何とも煩わしい物と思っておった。
 このガミラスに於いて誰が一番か、
 奴等は理解出来ないと見える」
「貴族の傲慢さ、と言うべきでしょうな」

同席しているタランはゆっくり頷き、
暫し何かを思案していた。

「タラン、どうした?」
「はい。実は…
 どうも地球側が
 奇妙な動きを見せております」
「奇妙な動き…ふむ……」
「元老院と地球政府が通じておるとは
 聊か考え難いのでは御座いますが…」
「蜂起は近い、と?」
「余り、念頭には置きたくありませんが…」

終わる筈だった星間戦争。
遺恨を残さない為に、と苦悩した結果が
裏目に出るのだろうと
デスラーは何処かで覚悟はしていた。

奪われれば奪い返す。
人間は何処かで、
そう記憶している生き物らしい。

「愚かな事だ…」
「総統……」

同じガミラス星人同士でも
解り合えない事は多い。
況してや異星人なら尚更である。

だが、デスラーは先日の
古代の覚悟に少なからず心打たれていた。

誰かを守る為。
例えそれが異星人であったとしても。
自分の肉親を死に至らしめた
憎き血を引く者であったとしても。

「アレは…」
「総統?」
「古代、面白い男だ。
 死なせるには惜しい男だ」
「確かに、興味深い存在です」
「アレは…後の世を変えるかも知れんな」
「総統…?」
「見てみたくなった。
 古代がこの宇宙に与える影響を。
 その結果、変わる未来とやらを」
「…御意」

血生臭い戦いの繰り返し。
その終止符を打つべき存在は
果たして現れるのであろうか。

嘗てはそれこそが自分の役目と信じ、
その為だけに突き進んできた。
だが、その反面
確かな【疑問】も抱いていた。
行動と信念。
その間に流れる【矛盾】が
何処かでデスラーを苦しめていた。

『お父様は…可哀想な方です…』

嘗て娘より投げ掛けられた
同情と哀れみに溢れた言葉。
前を見つめ、突き進む事しか
許されなかった孤独な男は
自身の中に芽生えた【矛盾】が
一人の男に依って
撃ち砕かれる瞬間を
心待ちにしていたのだろう。

「タラン」
「はっ」
「決して古代を死なせるでないぞ。
 あの男はまだまだ利用価値が有る」
「…御意」

口元に薄い笑みを浮かべ
デスラーはワインで咽喉を潤した。

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SITE UP・2011.12.17 ©森本 樹

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