File.4-18

今回の試練は正直
心身共に多大なダメージを残していた。
それしか術が無かったとは言え、
デスラーと肌を重ねた事。

『俺は結局、
 誰も守れてなどいないんだ…』

今度 島と会う時、
自分は一体どんな顔をしていれば
良いのだろうか。
いや、もしかすると
次など来ないのかも知れない。

悪い考えばかりが
次々と脳裏に去来する。

『父さんや母さんの、兄さんの敵も
 取れないままなのに…。
 俺は只、敵地で生かされているだけ。
 一体何の価値が有ると言うんだ?
 俺に出来る事なんて本当は
 最初から、何も無かったんじゃないのか?』

ネガティブな自問自答を繰り返し、溜息を吐く。
無駄な時間が怠惰に流れていく。

正にそんな時だった。
アイシァが移動テーブルを押して
古代の部屋にやって来たのだ。

「兄様。お茶は如何ですか?」
「あぁ、アイシァ。
 そうだね。お茶の時間にしようか」
「はい、直ぐに準備しますね」

アイシァと2人、こうして居る時間が
古代にとっては何よりも
心安らげる一時となっていた。
らしくないと苦笑交じりだったお茶の時間も
彼女と一緒ならそれだけで寛げた。

優しい茶葉の香りが鼻腔を擽る。
こんな瞬間ですら、愛しく思えた。

「兄様が助けて下さったあの子、
 母星へ戻るそうです」
「母星? ガミラスの?」
「はい。家族と共に暮らすのだとか」
「…そうなんだ」
「総統閣下のお計らいだそうです。
 きっと兄様のお心を汲んで下さったのですね」
「デスラーが…」
「こんな事は今迄一度も有りませんでした。
 帰っても又、貧窮の生活が待っているだけでしょうが…
 それでもあの子は、嬉しそうでした」
「……」
「これで、良かったのですよ」

アイシァはそう言って優しく微笑んでいる。
どんなに苦しくても故郷に、家族の元に戻れる。
彼女はその喜びと大切さを
誰よりも知っているのだろう。

「兄様は不思議なお方です」
「え?」
「だって…ガミラスの事を憎んでらしても
 可笑しくない立場で在られるのに…。
 我が身を盾にして迄、私達をお救いに…」
「だってアイシァは俺の【妹】だもん。
 妹の頼み位、兄貴なら叶えないとな!」
「有難う、進兄様…」

古代はふと思った。
自分は両親や兄に、何度心からの
『有難う』を伝えられただろうか、と。
彼等が生前、古代の為にしてくれた事を
自分は【当然】と認識していなかっただろうか。

『喪ってから気付かされる。
 大切な事は、何時だって…』

あの少年は、喪う前にそれが叶うのだから
少なくても幸せなのだろう。
そして、その手伝いが出来た事は
少なくとも『自分が動いたから』こそ
実現したのだ。

『大介。許してくれるか?
 こんな俺でも、お前は待っててくれるか?
 お前に会って、是非 聞きたいんだ。
 俺は…間違った道を進んではいないだろうか、と』

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SITE UP・2011.12.19 ©森本 樹

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