File.4-19

何かが近付いている、と
戦士の本能が囁く。
廊下を歩いていても
張り詰めた空気を其処彼処に感じる。
戦いが近いのかも知れない。

自分がこうしてガミラス帝国で
身を留めている事に、
少しずつだが意味を
失いつつある様な気持ちになり、
自ずと口数が少なくなっていた。

そんな或る日、俺の部屋に
珍しい客がやって来た。

「ドメル将軍…」
「久しぶりだな、古代」
「あぁ…、本当に。
 今迄、何処かに出ていたのか?」
「あぁ。此処と地球との往復でな」
「地球は…」
「問題は無い」
「そうか…」
「今の所はな」
「?」
「不穏な動きが有るからな。
 油断は出来ん」
「…そうなのか」

自分の感じた【不安】が
少しずつ形に、現実になっていく。

もどかしかった。
そして、悔しかった。

何の為に俺は此処に居るんだろう。

「残念だが、此処もお前にとっての
 安全圏とはならない様だ。
 今のガミラスは…
 お前も気付いている様に
 一枚岩では無いのだ。
 お前を疎ましく思っている奴等も
 少なからず存在している。
 …嘆かわしい事だがな」
「…それは、解っている、つもりだ」
「その様だな」

ドメルは小さく舌打ちしている。
苛立ちが伝わってくる。
彼も又、憂いでいるのだ。

「古代、これをお前に…」
「これ、は…?」
「私が以前総統閣下から拝領した
 ガミラス製の光線銃だ。
 勿論今迄手入れは欠かさなかったからな。
 何時でも引き金を引く事は可能だ」
「ドメル将軍…。
 どうして、そんな大切な物を俺に…?」

仕えるべき主より賜った銃。
その意味を、戦士である古代は
十二分に理解出来ていた。
だからこそ信じられなかった。
ドメルの、この行為が。

「私にはこれ位しか出来ぬが…」

ドメルは今度、小さく溜息を吐いた。

「古代、お前は【鍵】だ。
 我々ガミラス帝国と
 お前の故郷、地球を和平に導く
 大いなる鍵なのだ」
「鍵? 俺が…?」
「そうだ。だからこそ、古代。
 お前は…お前だけは、
 何が遭っても死んではならん」
「ドメル将軍……」
「良いか?
 死んではならぬぞ、古代」

ドメルの表情には並々ならぬ思いが
秘められている。

俺は、まだ死ぬ訳にはいかない。
約束したのだから。
もう一度、必ずもう一度
再会するのだと。

「有難う、ドメル将軍。
 この銃は大切に使わせてもらうよ」
「あぁ、その銃で必ず己が身を守り抜け。
 銃も私の骨董品にされるよりも
 その方がきっと喜ぶであろう」
「ドメル将軍…」
「良いな、古代。絶対にだ」

生き抜く。
この戦乱の世で最も大切な事。

俺はドメルから銃を受け取ると
力強く頷いた。

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SITE UP・2011.12.27 ©森本 樹

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