File.4-20

「最近、慌しくなってますね…」

アイシァの言葉に
俺は只、頷くしかなかった。

元来非戦闘員であるアイシァ達だが
戦争を知らない訳ではない。
寧ろ『戦争を楽しんでいる』かの様な
一部の支配階級や勢力に比べたら
彼等の方が余程
戦争や戦場を理解しているに違いない。

「また…戦いが始まってしまうのでしょうか?」
「アイシァ…」
「私達ガミラス星人は…地球の人々と
 仲良く生きてはいけない定めなのでしょうか?」
「それは違うよ、アイシァ」
「兄様……」
「俺達の様に、きっと解り合える。
 仲良くなれるよ。大丈夫だ」
「…そう、ですよね」
「あぁ、そうさ。
 諦めなければ道は必ず繋がる。
 信じよう、人の【心】を」
「兄様…。はい、そうですよね」

争いは避けられないのかも知れない。
愚かな人類が居る限り
愚かな争いが繰り返される。
そして嘆き悲しむのは何時だって…
力無き人々なのだ。

「…もう、俺の様な思いは
 誰にもして欲しくない。
 地球人も、ガミラスの人々にも…」

その為に俺が出来る事は何だろう。
考える事は昔から苦手だが、
今は俺一人しか此処には居ない。
こんな時だからこそ
俺は今迄以上にアイツの存在を
こんなにも強く求めている。

『教えてくれ、大介。
 この戦いを、どうすれば回避出来るのか。
 地球を愚かな争いから救い出す為に、
 もうこれ以上…誰も悲しませない為に…』

* * * * * *

夕餉の時間が迫って来ているのが判る。
する事が無かった以前の自分は、
この時間が何よりも待ち遠しかった。

飯が出来る頃に漂ってくる香り。
暖かな飯が運ばれてくる時。
それを口に放り込む時。
どれもが『生きてる』って実感出来た。
だから、俺はこの時間帯が一番好きだ。

扉の向こうで誰かの気配がする。
アイシァだろうか。
或いはタランか、それとも別の使者か。
だが何れにせよ、黙って立っている事は無い。
アイシァであれば、一声掛けて入室してくる。
タランや他の者でも、ノック位はする。

「誰だ?」

俺は扉の向こうに潜む気配に声を掛けた。
だが、返事は無い。
代わりに感じるのは、【殺気】である。

俺は意を決して、扉を開けた。
これだけの殺気を纏う者の正体を
確認したい衝動に駆られたのだ。

扉を開けてすぐ、その姿を
見付ける事は叶わなかった。

「やっと見付けた、地球人…」
「え?」

声は俺の腰位の高さから聴こえた。
視線を合わせると、其処には一人の少年の姿。
まさか…この少年が?

動揺と、一瞬の油断。
彼は迷わず、俺の腰に携帯していた
光線銃を抜き取り、構えた。

「お前の所為で…兄ちゃんが死んだ」
「……」
「お前が兄ちゃんを殺したんだ!
 だから今度は俺がお前を殺す!
 兄ちゃんの仇を討つんだッ!!」

その殺気の理由。
俺には…はっきりと理解出来た。
【同じ】なのだ。
あの時の…俺と……。

光線銃が放たれる独特の音が耳に届いた瞬間。
俺の意識は真っ白な空間に放たれ、
やがて跡形も無く…消えた。

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SITE UP・2011.12.31 ©森本 樹

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