File.4-2

氷の様な視線なら、まだ耐えられた。
まるで実験動物を見るかの様な
あからさまに愚弄した視線の波。

古代には、其方の方が堪えた。

『我慢しろ。判っていた筈だ。
 俺は只の捕虜。俺に自由など無い』

艦載機の発着所。
そしてその先に通じる通路から
確かに誰かの影が見える。

青白い老人の将を控えさせ、
真っ直ぐに古代の元へとやって来る
その相手こそ、デスラーその人だった。

「ようこそ、地球からの友人。
 我々ガミラス帝国は
 君の勇気有る行動を歓迎する」
「…どうも」
「ふむ、緊張しているのかね?
 君は平和の使者である。
 そんな君の首をこの場で撥ねるほど
 我々は野蛮な存在ではない」
「……」

デスラーは流石に総統と言われるだけある。
先程までの古代を馬鹿にした視線は
彼の出現と共に全く感じなくなった。
一挙手一投足、全てが正にデスラーの思うが侭。
この統率力こそが、ガミラス帝国の強さだとしたら。

『やはり地球の敗北は…
 約束されたものだったって事か』

急に戦いを空しく感じた。
両親を喪い、兄を喪い、
だがやはりどう足掻いても勝てない現実に
古代は心底打ちのめされた。

「どうした、古代?
 随分と大人しいではないか」
「…考えているんだよ。色々とな」
「ほぅ……」
「どうやったら、アンタに一矢報いられるか…とかな」

瞬時に数人の兵士が銃を構えたが
デスラーはそれを難なく制する。

「良いぞ、古代。
 私はそう云う態度を示す者を待っていた。
 飼い殺された人形を相手にしても
 面白くも何とも無い。
 どれだけ苦杯を舐めさせられても
 其処から這い上がる、そんな男をな」
「…デスラー」

「私の生命を狙うが良い、古代。
 それが可能であるのならば
 見事この生命を奪ってみせよ。
 此処は戦場。油断すればその先にあるのは死のみ。
 君に討ち取られる様では
 このデスラーもまだまだその程度だと言う事だ」
「暗殺を…容認すると、言う事か?」
「総統職になど就いていると、
 暗殺など日常茶飯事なのだよ。
 今更珍しくも何とも無い」
「……」

不思議な感じだった。
地球防衛軍所属の一宇宙戦士に過ぎない自分が
敵国ガミラスの総統とこうして対面する事。
そして、図らずもその内情に触れる事。
今迄は考えもしない事だった。

否、考える必要は無かったのだ。
目の前に居る敵を撃破、排除する事だけ
考えていれば良かった。
それが地球の為に成ると信じて。

『だが、本当にそれは…
 地球の為になっていたんだろうか?』

古代の心は大きく揺れ始めていた。

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SITE UP・2011.1.1 ©森本 樹

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