File.5-1

なぁ、進…。
お前は今頃、何をしてるんだ?
お前の事だ。
置かれている環境なんて乗り越えて
案外、デスラー総統と
意気投合してるんじゃないか?

お前は見掛けによらず芯が強いし
逆境に追い込まれれば追い込まれる程
真価を発揮するタイプだからな。
俺は何も心配などしていない。
お前なら、きっと大丈夫だ。

何が遭ったとしても…
俺はお前を、信じているから……。

* * * * * *

無造作に乱雑に置かれた書籍やデータチップを
綺麗に整理し、棚に収めていく作業。
延々と繰り返される単調な動作にも
いつの間にか慣れてしまっていた。

敗戦国になれば、こんなものである。
軍でそれなりの地位に居た者として
生命が有るだけでも有り難い。

「ふぅ〜。そろそろ時間か?」

島は一息吐きながら、壁掛け時計を確認した。
針はそろそろ17時を指そうとしていた。

「最近は随分と資料の出し入れが激しくなってきたな。
 こんな資料等、既に無用の長物だと思っていたが…
 又 キナ臭い雰囲気になったと云う事なのか?」

否、それは有り得ない。
和平の為にと古代 進はガミラス帝国へと赴いたのだ。
たった一人で。

「そうさ…。俺達は平和を手に入れたんだ。
 進の…アイツの身柄と引き換えにな」

そう呟くと、堪らなく苛立たしくなった。
同じ場所に立っていた筈なのに
自分は保身の為に何も出来なかった。
意を発し、自らを犠牲に出来たのは
地球人の中では
古代 進、唯一人だったのだ。

やがて室内にベルの音が鳴り響く。
終業時間の17時を知らせるベルだ。
島はそれを確認してから帰り支度を始めた。
定刻通りに帰宅する今のスタイルに
疑問を抱く事は放棄した。

今の自分は『軍人とは呼べない』身なのだから。

* * * * * *

モノレールから静かに外を見つめる。
放射線物質の汚染を免れた地下都市は
こんなにも穏やかな表情を見せるのかと
感慨深くなっている自分に気付いた。

『アイツがこの町並みを見たら…
 一体、何て言うんだろうな…』

自分達が挑んだ戦いの意味。
戦わずして手に入れてしまった結果に
満足など出来ない。
出来よう筈も無い。

『仮初めの平和よりも俺は…』

モノレールが静かに終着駅に向かう。
最後に古代と乗った時の情景が思い出され
島は胸を締め付けられる様な気分になった。

『俺はこんな未来を…
 望んでなどいなかった。
 進、お前の居ない地球に
 俺の居場所等無いんだ……』

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SITE UP・2013.01.23 ©森本 樹

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