File.4-9

その日の晩。
随分とグダグダ悩んでみたが、
結局良い知恵等は出てこなかった。

元より、俺はこう云う事が苦手なんだ。
考えたり、計画を立てたりするのは
俺なんかよりも大介の方が
余程速かったし、巧かった。

「困ったなぁ……」

一人でベッドの上に座り、
ボンヤリと窓の外を見上げてみる。
淡い光を放つ星々が、
俺の心の不安定さを物語っている様だ。

扉の開く音がする。
デスラーだろうか?
彼の個室は確か、この隣の部屋。
まぁ…自室を間違えるなんて事は無いだろうから
多分、俺の様子でも見に来たのだろう。

「随分と大人しいではないか」
「出歩いたって、艦内で迷子になるのがオチだからね」
「成程、懸命だな」
「……」

デスラーも無防備と云う訳ではないだろう。
腰には光線銃を携帯しており
何時でも襲撃に備えている。
以前、彼自身が話していた【暗殺】についても
強ち出鱈目ではないのだろうと推察出来る。

「ヒス副総統に言われたんだが…」
「ヒスに?」
「俺は…【夜伽要員】なのか?」
「……?」
「いや、だから…」
「お前にその様な趣味が有ると言うのならば
 考えてやっても良いが…」
「い…いや、そう言う訳じゃない!
 ただ俺は、ヒス副総統から…」
「ヒス、と呼べば良い。
 アレの趣味は私自身、少し着いて行けぬ所が有る」
「そ…そうなのか…?」
「アレは貴族軍人の代表格みたいなものだからな。
 此方の顔色を窺う姿勢が丸判りで、聊か興醒めする」
「……」
「お前のその姿にしてもな」
「このドレス…。
 やはり、デスラーの意向じゃなかったのか…」
「軍人に女装させる趣味は持ち合わせておらぬ」
「…そうか。そうだよな」

俺は心配事が一気に消え去った様な感じがして
心の底から安堵した表情を浮かべた。
だって、そうだよな。
一国の主であるデスラーが、こんな趣味持ってる筈無いよな。

「軍人出身のお前には期待していない」
「? 何がだ?」
「夜伽の件だ。それ相応の役目の者が居る」
「……え?」

デスラーは口元を微かに動かして笑っている。
これは…莫迦にされているのだと瞬時に思った。

「俺だって、男同士でどうするか位知ってる!」
「……ほぅ」

勢い余って余計な事を口走ってしまった。
然もデスラーと云う男は
こう云う余計な一言をよく記憶している。
完全に俺は、墓穴を掘った。

「なかなかお前は優秀な人間の様だ。
 それならば、夜伽の件も期待出来よう」
「あ…それは……」
「楽しみにしているぞ、古代」
「……」

高らかな笑い声を上げて去って行くデスラーの背中を
俺は黙って見送るしか出来なかった。

[8]  web拍手 by FC2   [10]



SITE UP・2011.3.11 ©森本 樹

目次