File.5-10

同時刻。
佐渡とアナライザーも白き光を確認していた。
小さな目を細め、佐渡は何も言わず
やがて消え行くその軌跡をずっと見つめていた。

「佐渡先生」
「…行きおったな、アイツは」
「沖田艦長ニ報告ヲ入レナイト
 イケマセンネ」
「あぁ、そうじゃな」
「島サンガ帰ッテ来タラ
 コノ計画ノ全容ヲ明カシマスカ?」
「…覚えていればな」
「私ハ覚エテマスヨ」
「はは、そりゃそうじゃ。
 お前さんの頭はワシより良く出来てるじゃろうが!
 そんなにデカい頭をしてからに!」
「頭ノ大キサダケノ問題デハナイト思イマスケド…」
「まぁ、良いわい。
 それよりもアナライザー。
 今日、ワシは気分が良い。
 帰ったら宴会を開くぞ!」
「待ッテマシタ!!」
「ささやかな祝杯じゃ!
 今日は呑むぞ!盛大に呑むぞ!
 その内に呑めなくなるんじゃから
 今の間に目一杯呑むぞ!!」

佐渡は大きな声でガハハと笑いながら
何事も無かったかの様に
相棒のアナライザーと帰宅の徒に付いた。

* * * * * *

「…そうですか、解りました。
 此方も今確認しました。
 無事に送り出せた様です…」

通信機を片手に、南部も又
あの白き光の軌跡に目を細めていた。

「無理を聞き入れて下さって感謝してます。
 島家の皆さんの事、
 引き続き宜しくお願いします」
『解っている。我が名に賭けても
 あの3人の保護は任せておきなさい。
 只…康雄、お前も余り無理をせん様にな』
「…解ってますよ。
 派手な事はしない様、気を付けます。
 目を付けられているのは僕も同じですから」
『お前も、もう子供ではないからな。
 その辺は信頼しているよ』
「有難う御座います、お父さん」

通信を切り、周囲に注意を送る。
特に誰の気配も感じない。

「俺もそろそろ此処から引き上げないと」

再度車に乗り込み、エンジンをかける。
ドライブと洒落込み、もう少しだけ走るとしよう。
南部はそう決めると、
特に目的地を定める事無く走り出した。

* * * * * *

ミサイルの包囲網を擦り抜け、飛び立ったコスモ・ゼロ。
自分の想いと共に、島は古代の許へと飛び立った。
空に描かれた白い軌跡は、今の自分に眩し過ぎる。
直視出来ない程に。
そう感じるのはきっと、自分が【汚れた存在】と感じたから。

政府高官の息子との戦略結婚が決まった時
自分は何度生命を投げ出そうと思った事か。
苦しかった。悲しかった。
父の為、母の為、と我慢しようと誓っても
古代の事が脳裏から離れる時は只の一度も無かった。
もっと早くこの恋心に気付いていれば
こんな後悔等せずに済んだかも知れない。

「でも、もうそんな事も終わり。
 これで私は……」

雪は静かにそう呟き、微笑むと
格納庫の外付け非常階段を
ゆっくりと登って行った。

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SITE UP・2013.05.22 ©森本 樹

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