| File.5-4 |
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昨晩は少し呑み過ぎたかも知れない。 しかし此処は自分以外誰も居ない。 書類に囲まれ、今では慣れた動きで 少しずつ片付けていく。 休戦から半年が過ぎていた。 昨晩の父親の発言通り 人間とは実に【都合の良い】生き物らしい。 喉元を過ぎれば熱さを忘れる。 そうしなければ生きていけないほど、脆い生物。 人間等、その程度の生物なのかも知れない。 「ん?」 「手伝イマショウカ?」 「お前…?」 「オ久シブリデス、島サン」 「アナライザー!!」 赤く丸みのあるボディに思わず抱きついた。 勿論人肌の様な体温は無いものの それでも今の島にとっては 充分に温かな感触だった。 「どうしたんだ、お前? こんな場所に」 「一寸野暮用デス」 「ん?」 「ア、来マシタ」 アナライザーは器用にアームを振って 此方に来いと手招きしている。 手招きに従い、此方に近付いて来る人影は 確かに見覚えのある姿だった。 「佐渡先生っ?!」 「久しぶりじゃのぅ、島。 やはりお前さん、又痩せたな」 「お久しぶりです、先生。 でも…どうして先生が此処に?」 「それはじゃなぁ…」 佐渡は大きく咳払いをし、 アナライザーに何かを促している。 数秒後、彼の返答は「0%」だった。 「なら、安心じゃな」 「え…?」 「アナライザーにな、盗聴器や監視カメラの存在を 調べてもらっておったんじゃよ。 この一角はどうやらそう云う類を 一切用意しておらん様で安心したわい」 「それ程の価値も無いでしょう」 「お前は自分を過小評価しておるようじゃな、島」 佐渡の視線が一瞬だが鋭くなった。 其処に秘められた思いが、何となくだが伝わって来る。 【時】が動いたのだと。 「島、今日は早く此処を引き上げるんじゃ」 「佐渡先生…」 「其処から先は、指示する人間を用意しておる。 ソイツの意見に従って行動するんじゃ」 「…先生、どうして俺を……?」 「……」 「俺は…消されるんですか?」 「…可能性は高い」 「……」 昨晩の両親の態度や言葉を思い出す。 息子の未来を悲観し、それでも生きて欲しいと願う。 祝杯を挙げる事で、これから先の出来事と戦う為に 決意を示したのだろう。 「俺は、生きます」 「島…」 「殺されて堪るか…。 俺は約束したんだ。 アイツを、古代を迎えに行くと…」 佐渡は何も言わず、黙って島の肩を叩いた。 それが何よりものエールとなって 島の心に優しく染み込んでいく。 死ねない理由が、又一つ…出来た。 |