File.5-6

「おい、南部。
 一体どう云う事だ?」

南部の襟首を掴む手がブルブルと震えている。
全身の血が逆流するかの様に熱い。

信じられない。
信じたくない。
出来れば確認などしたくはない。
だが…。

「政府が…古代の死を公表するらしい。
 そして、ガミラスとの開戦を宣言すると…」
「莫迦なっ?!」
「俺だってそう思うよっ!!」
「南部…」
「…済まない」

怒りの余り激しく動いた為
ずれたメガネを掛け直しながら
南部は視線を島に向けた。

「俺だって信じてない。
 信じたくない。
 当たり前だろう?
 だからこそ…思い切ったんだ」
「南部……」
「俺は宇宙に飛び出せる迄は自由が利かない。
 第一、コスモ・ゼロに搭乗しても
 撃ち落されるのが関の山だ。
 アレを乗りこなせる奴は早々居ない」
「加藤や山本は?
 あいつ等なら…」
「残念ながら地球には居ない。
 戻って来る見込みも立っていない」
「…くそっ」
「だから、お前なんだ」

不安が無い訳ではない。
謂わばこれは【反逆行為】である。
実家の後ろ盾を利用し
地球に反旗を翻した事になるのだ。
それでも、動かざるを得なかった。

【古代 進の死】と云う情報が
南部を此処迄駆り立てたのかも知れない。

「お前を格納庫に降ろしたら、
 其処からは別の案内人が居る。
 その人物に従ってくれ」
「…解った。お前は?」
「俺は時間稼ぎに向かうとするよ。
 見張りは少しでも少ない方が良いだろ?」
「…そうだな」
「古代の事、頼むな」
「あぁ…。南部、その…」
「ん?」
「俺の家族の事、有難う。
 宜しく頼む」
「勿論だ。其方は期待に答えるよ」

互いに顔を見合わせ、微笑を浮かべる。
もう二度と会えないかも知れない戦友。
互いの成果の成功を祈り、自身の任務を追行する。
今はもう振り返らない。
前だけを見て突き進む。
それがきっと、互いの為になると信じて。

握手もしなかった。
それはきっと…
【再会】を信じたからこその
行為だったのかも知れない。

* * * * * *

明かりの落とされた格納庫。
人の気配は殆ど無かった。
だが、念の為にと
島はコスモガンを片手に、慎重に歩を進める。

「…在った。コスモ・ゼロだ……」

嘗て古代 守が、そしてその弟 進が搭乗した
最新鋭宇宙戦闘機コスモ・ゼロ。
これを繰り出し、宇宙へ…ガミラスへ向かう。
地球の防衛圏から無事に脱出出来るのか。
出来たとしてもガミラスは自分を受け入れるのだろうか。
不安はやはり、尽きなかった。

[5]  web拍手 by FC2   [7]



SITE UP・2013.05.23 ©森本 樹

【書庫 目次】