File.5-8

こうしてコックピットに乗り込むのは初めてだ。
訓練生時代に模擬訓練で乗った事は有ったが
アレはあくまでも汎用型だった。
しかし、コスモ・ゼロは違う。
今現在に於いても地球の最高技術を駆使して作られた
たった1機しかない代物なのだ。
天才の名を欲しい侭にしていた古代や
凄腕のパイロットである加藤や山本とは違い、
所詮は船乗りでしかない自分に
果たしてこの機を乗りこなせるのだろうか。

「乗りこなせれば、死ぬだけだ」

覚悟など当に出来てる、そう思っていた。
だが…やはり自分の人間なのだ。
その場面毎、窮地を向かえる毎に
どうしても不安や恐怖が脳裏を過ぎる。

「進…。
 遅くなったけど、俺…行くよ。
 お前の待つ宇宙へ」

メインパネルに光が入る。
それと同時に格納庫の屋根がゆっくりと開かれていく。
いよいよだ。

「森君……」

管制室では雪が機械を操作している。
たった一人で。
此処迄してくれた彼女の為にも
そして南部や家族の為にも
絶対に地球の防衛圏を抜け出さなければならない。
その先の事は、抜け出してから考えれば良い。

「System All Green.
 Right…Left OK」

鼓動が脳を揺さぶる様な感覚に襲われる。
エンジンの振動が、全身を震わせる。

「森君…、行ってくるよ」
『気を付けて、島君』
「あぁ、古代と一緒に
 必ず帰って来るからな!」

ガラス壁越しに、雪が微笑んでいる。
その姿を確認すると、島は視線を空に向けた。

「コスモ・ゼロ 発進しますっ!!」

号令と共にグリップを手前に思い切り引いた。
直後に襲われる重力加速度の洗礼。
ヤマトに乗ってる時には微塵も感じなかった
強烈なプレッシャー。
まるで島を地球と云う名の鳥篭から
抜け出さない様にする為の鎖の如くである。

「俺は…っ、古代に会うんだ…っ!
 アイツを…、迎えに行くんだッ!!」

叫びながら意識を集中させていく。
古代の笑顔を思い浮かべた瞬間
グリップの重さをまるで感じなくなった。
古代と共にコスモ・ゼロに乗っている様な
そんな錯覚さえする。

コスモ・ゼロは島 大介を搭乗者として認めた。
そう云う事になるのだろうか。

「そろそろ大気圏突破になるな。…ん?」

レーダーが激しく反応している。
背後からの飛行物体。
迎撃用ミサイルか、それとも追撃用の戦闘機か。

「くそっ、落とされて堪るかっ!!」

島は機体を急反転させた。
流石に古代の様にはスムーズにいかなかったらしく
一瞬だけ視界が定まらなくなった。
それでも持ち前のセンスで
敵の正体を掴むべく体勢を立て直す。

「やはりミサイルか」

コスモ・ゼロの武装も南部が手配を済ませてくれていた。
だが島は追撃する2発のミサイルを巧くかわしながら
更に上昇を試みる事にした。
ミサイルの軌道を潜り抜けながら上へ、更に上へ。
巧みな機体捌きに付いていけなくなったのは
ミサイルの方だった。
コスモ・ゼロが一層の加速を見せた直後
2発のミサイルは互いに衝突し、爆発した。

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SITE UP・2013.06.11 ©森本 樹

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