Data.1-12

「なぁ、古代」
「何だ? 島」
「もしも俺に何か遭ったら…」
「縁起でも無い事言うなよ!
 本気で怒るぞ!!」
「俺達は宇宙戦士なんだから
 何時如何なる時でも
 『もしも』に備えるのは当然だろ?」
「だがしかし…お前は航海班じゃないか」
「時には戦場にも出るさ。
 航海班だからと言って
 船内に侵入して来た敵を
 そのまま放っておく訳にはいくまい」
「…そりゃ、まぁ…そうなんだが……」

大介は優しい表情で此方を見つめる。
何時如何なる時も変わらない。
優しいが、芯の通った力強い表情。

コイツには【覚悟】がある。
俺には無い、覚悟と信念が。
何時からこんな男になったのだろう。
コイツを変えたのは、誰なんだろう。

【彼女】、なのだろうか…。

「俺はな、古代。
 どう生きるか、を考えながら
 最近は何を後世に残すか、を思い描いてる」
「後世に残す?
 だってお前、既に残してるじゃないか」
「ん?」
「人類初のワープ航行成功者。
 立派に【名前】を残しているだろう?」
「…まぁ、な」
「それとも何だ?
 結婚して、子供を沢山育てる気か?」
「…俺は結婚しないよ」
「え?」
「…多分な。そんな気にもなれないし。
 少なくとも今は、結婚する事は無いだろう」
「勿体無いなぁ…」
「そうじゃなくて」

大介は苦笑を浮かべている。
いつもと変わらない笑顔の筈が
やはり少し昔と違って見えた。
男の笑い方である筈なのに
何処と無く女性的にも映る。
【中性的】になったのだろう。

「俺は…この平和が一時的なものだと感じてる」
「…島」
「だからこそ、俺達が存在する。
 本当に平和な世界であれば
 俺達【職業軍人】は必要無い筈」
「それはまぁ、そうだけど…」
「俺達の力が必要なんだ、この社会は」
「島……」
「俺はな、古代…」

* * * * * *

大介…。
お前と共に笑い合えたあの日々が
酷く遠くに感じてしまって…
俺は生きていくのが辛かったんだ。

愛する者を喪った瞬間
目の前は漆黒の闇と化し、
空気すら存在しない虚無に
俺は叩き落されてしまった。

生き残る事の重み。
その辛さ、苦しさ。

知っていればもう少し、
お前に優しく出来たのだろうか。
結局俺は最期まで
お前の優しさに守られていた。
お前の大いなる愛の下、
俺は傷付く事も知らずに生きてこれたんだ。

喪ってから気付いた。
お前と云う存在感の重さを…。
今更気付いた所でもう、
どうする事も出来ないのに…。

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SITE UP・2010.3.25 ©森本 樹


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