Data.1-15

あぁ、又だ。
この広大な宇宙に
唯一人残される恐怖。
無性に誰かの温もりが欲しくなる。

一人は嫌だ。
ヒトリハ…イヤダ……。

『進……』

ダレ…?

『進…貴方を、愛しています……』

誰…だ?

『貴方を…俺が、守ります……』

誰なんだ…?
大介じゃない、この声は……。

『進…、もう一人にはしない。
 俺が必ず、貴方を…守ってみせる』

次郎……。

* * * * * *

細身ながらしっかりとした体躯に
嘗ての大介を思い起こさせる。

古代は次郎の腕に抱かれながら
ずっと思考の海に漂っていたのだと
漸く自覚する事が出来た。

『姿や声だけじゃなく、
 意外と体臭まで似るものなんだろうか…?』

一人の男として、古代を抱く以上
次郎も兄である大介とは
比較などされたくないだろうから。
そう思いながらも
こんな簡単に兄弟を比べた挙句
勝手にネガティブな思考の海に堕ちるのだから
つくづく自分は駄目な奴なんだと
古代は再び自己嫌悪してしまう。

次郎が愛用している整髪剤の香りは
偶然なのか、大介の愛用品と同じ種類であり
古代の鼻はそれに反応したのである。

『こんなソックリに成長しなくても
 次郎は次郎のままで良かったのに…』

古代はそう心の中でゴチると
クスッと笑みを零した。

古代は知らない。
次郎がそう迄して
兄 大介に近付こうとした理由を。
彼と同じ経緯でヤマトに乗ろうとした事を。

喪った存在の大きさ。
次郎にとっても大介は【全て】だった。

誰かの為に強くなれる男。
理想の大人。
最も身近ながら、最も憧れた存在。
次郎にとって、それが大介だった。

古代との関係は子供ながらに知っていた。
母親の素振りから意味を知ったのも
かなり早い段階だったと記憶している。

古代だけに見せる大介の笑顔は
まるで自分の知らない表情だった。
心からの幸せそうな笑み。
無邪気で子供の様にコロコロと変化する。

こんなにも幸せだった。
古代の御蔭で、大介は大介で居られた。
そして次郎も又 そんな古代の魅力に惹かれた。
必然だったのだろう。
次郎が古代に恋をしたのは。

だからこそ、大介の戦死は
次郎にとっても俄かに信じられなかった。
どんな事が遭っても彼は地球に戻ってくる。
いつもの笑みを浮かべて。
幸せそうに、古代や仲間達と共に…。

大介の遺体が家族の下に戻る事は無かった。
だからこそ、彼の戦死は言葉だけに留まり
心の中まで浸透する事がなく、
それ故 次郎にとっては信じ難い事実として
認識せざるを得なかったのである。

『兄さん…。大介兄さん……』

次郎も又、心の傷が癒えぬまま
古代を抱き締めていたのだ。

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SITE UP・2010.4.5 ©森本 樹


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