Data.1-17

兄さん…。
大介兄さん…。

貴方は俺に『忘れろ』と告げた。
アクエリアスを止める為の戦い。
赴く前の一時の刹那。

『俺がもし戻って来れなくなっても
 悲しみ続けないでくれ。
 お前の泣き顔を見る事の方が
 俺にとっては辛い事なんだ』

寂しそうに微笑みながら
俺にそう語り掛けて来た兄さん。
あんな表情は見た事が無かった。
それに、そんな自信無さ気な声。
今迄聞いた事が無かった。

俺の知らなかった兄さん。
だけどそれは確かに
【島 大介】と云う人間の側面だった。
最初から自信等無い。
それでも自分を奮い立たせて
数々の偉業を重ね続けて来た。

兄さんは孤独だったのかも知れない。
だからこそ、進の存在を
誰よりも大切に守り続けて来た。
口では言い表せない【孤独】の闇を
2人は共有してきたんだろう…。

【死】が二人を分かつ迄……。

『俺は…進と共に居る事で
 大介兄さんを理解したいと
 願っているだけかも知れない。
 兄さんと同じ目線で進と接すれば
 彼がどんな想いを抱いて戦い続けたのか、
 それが解る様な気がしていたから…』

正直、寂しかった。
歳の離れた兄弟と云う関係上、
心優しい兄が傷付き、悲しんでいても
録に相談にすら乗れなかった。
自分が相談に乗りたいとどれだけ望んでも
彼は心の内を明かそうとはしないだろう。
島 大介とはそんな男なのだ。

『水臭い、と思ったよ。
 今は本当に、そう感じてる…』

心結ばれた異世界の女性との悲恋も
大介の心を頑なにさせた原因だったのだろうか。
誰よりも救いたいと願った女性は
彼の延命と幸せを願い…その身を犠牲にした。
その事実を知らされた彼の狼狽と絶望。
立ち直る迄の期間。

『あれが本当に大介兄さんなのか、と
 何度も疑ってしまう程だった。
 思えばあの姿が…最初っで最後だったんだな。
 大介兄さんの、隠し続けていた本当の姿…』

絶望の淵に居た大介を救い出したのは
今自分の腕の中に居る進その人である。
彼の強い思いが、そして共有する悲しみが
強引にでも大介を現実に引き戻した。

『俺には不可能だった。
 でも…進はそれを成し遂げてくれた……』

大介の恩人でもある進。
そんな彼が今、深く傷付き苦しんでいる。

『だから今度は、俺の番…。
 あの時の貴方の様に…
 俺が今度こそ、救い出してみせる。
 【悲しみ】と云う、牢屋から……』

こんな形でしか愛情を表現出来ない事に
一抹の寂しさを感じてはいるが、
それでも次郎に迷いは無かった。

それが、自分達【兄弟】が出来る
古代 進への感謝の気持ちなのだから。

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SITE UP・2010.4.15 ©森本 樹


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