Data.1-18

シャワーの熱い飛沫が
意識を私的から公的にへと切り替えさせる。
甘い蜜月の終わり。

次郎は流石に疲れてしまったのか、
先程からベッドで寝息を立てている。
浴室からその可愛らしい声を聞きながら
慣れた手つきで体を隅々迄洗っていく。
流石に、この姿は余り見られたく無い。

自分の手の動きを感じながら
先程までの次郎との行為を思い出し、
進は思わず情けない笑みを浮かべた。

「…いかん、いかん。
 早く第一艦橋に向かわないと…」

油断すると顔が綻んでしまう。
艦長がその様子では、若いクルー達に示しが着かない。
大村が存命であれば、小さく咳払いをし
彼の意識を現実に向けさせてくれるだろうが。

「喪ってからまで縋ってちゃ…
 大村さんだって、浮かばれやしないだろう」

シャワーを止め、髪に残った水滴を払う。
濃い湯気の先に、大村の笑顔が見えた気がした。
進の考えを肯定する様に、優しい笑みを浮かべ。

まだ歳若い副長に、大村の様な行動を期待するのは
余りにも酷な話である。
進はそれを充分に理解していた。
だからこそ、彼の負担はなるべく軽減したい。
その上で、頼れる所は頼り…時には甘えたい。

次郎だから出来る事。
次郎にしか出来ない事。
それが、漸く見え始めていた。

「守ると誓ったんだ…」

進は拳に力を篭め、己の手をジッと見つめた。

「今度こそ…離しは、しない…」

* * * * * *

「進……?」

浴室から出てみると、次郎は覚醒していたらしい。
ベッドの上で、恥ずかしそうにシーツで身を隠していた。

「先に第一艦橋に戻っておくよ。
 お前はシャワーでも浴びて、
 少しゆっくりしてから来れば良い」
「は…はい。あの……」
「ん?」
「あの…俺……」

次郎は何かを言いたそうにしているが
それが何で有るのかがイマイチ見えてこない。

『まさか…な、流石に……』

こう云う時に限って進の脳裏には最悪な状況しか浮かばない。
愛し合っていた時はあれ程、自信が有った筈なのに
いざ、普段に戻れば急に次郎の気持ちを疑ってしまう。

「俺…又、貴方とこうしていたい…」

次郎からの返事は、見事に進を裏切った。
相当の覚悟を持って告白したのだ。
一度きりで終わらせるつもりなど、
次郎には毛頭無いのだから。

「その…俺、進の事をちゃんと……」
「…次郎」
「はい…」
「凄く…嬉しかったよ…」
「…そうか、良かった」
「又…二人きりで過ごそう、次郎」
「進……」
「俺が必要になったら、その時は
 目配せでもして…合図するだけで良い」
「進…勿論です……。
 もう貴方を一人になんてしない。
 俺が…一人になんてさせない……っ」
「次郎…有難う……」

進は、年齢に凡そ似つかわしく無い程破顔させ
次郎をそっと抱き締めると
そのまま熱い口付けを送った。
そして次郎も又、進を力強く抱き寄せ
その口付けに答えた。

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SITE UP・2010.4.20 ©森本 樹


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