| Data.1-19 |
|---|
第一艦橋は先程と何も変わらない。 特に何か事件が起こった訳でも無く 古代は静かに全体を見渡してから 自分の席に腰を下ろした。 だが、彼は気付いていなかった。 自身の纏っている雰囲気の変化に。 孤高故に孤独だった、氷の様な気迫。 いつの間にかその強靭な鎧は彼から離れていた。 替わりに身に着けていたのは 温かな陽溜まりを思わせるオーラ。 共に居るだけで勇気が湧き上がり、 未知の世界へ一歩を踏み出す力を与える。 嘗て古代 進が身に纏っていた、 超一流の宇宙戦士としての物である。 「雰囲気…変わった気がしねぇ?」 上条はそっと郷田に耳打ちする。 郷田も気付いたのだろう、何度か頷いた。 「何だか…別人みたいだ」 「アレこそが…伝説の『古代 進』かな?」 「かも知れん。言われれば納得だ…」 桜井も又、初めて見せる古代の凛とした横顔を 嬉しそうに眺めていた。 その間、完全に彼の手は動きが止まっており 空かさず古代本人からの容赦無い叱責が飛んでくる。 「桜井っ!」 「は…はいっ!!」 「何ボーっとしてるんだ? 舵取りは今、お前の責任下に有るんだろう。 ヤマトを遭難させるつもりか?」 「い…いえ、そ…そんなつもりは…」 「ならば操舵に集中しろ! お前はまだ見習いも同然なんだからな」 言葉は厳しいが、古代の表情は明るい。 声にも張りがあり、目元は優しく微笑んでいる。 「上条、郷田!」 「は…はい!」 「はい、艦長!」 「お前達もな、私語は程々にしておけ」 「え…?」 「聞こえて…ました?」 「あぁ。それなりにな」 「「……」」 古代はフフっと鼻で笑いながら 視線を手元に戻した。 真帆からの通信を確認し、直ぐに返送する。 「プロキオ星系…か。 確かに地球連邦政府のデータベースにも この星系の情報は入ってなかったな…」 ヤマトがこれから挑む未知の星系。 この胸の奥で揺れる興奮は イスカンダルに向かって旅立った あの頃のソレに酷似している。 「生きている事が航海…。 そして、知らない場所に旅立ち… また、世界が広がっていく……」 何が待ち構えているかは判らない。 だが、今は不思議と恐れが全く無かった。 好奇心と、それを遙かに上回る安心感が 確かに古代の中で芽生え、 クルー達を静かに優しく包み込んでいる。 嘗て、尊敬する沖田艦長が何も言わず 自分達を温かく見守ってくれていた様に。 『沖田艦長…。父さん…。 俺は、少しだけ…貴方に近付けたでしょうか?』 古代は一人、そっと語り掛けていた。 自分が追い求める理想の艦長像、沖田 十三の魂に。 |