Data.1-3

医務室に歩を進めていると
目的に部屋から見慣れた栗色の髪の少女の姿が。

古代 美雪。

艦長、古代 進の一人娘。
彼女もまた、行方不明の母 雪を捜す為に
このヤマトの乗組員となった1人である。

「美雪ちゃん…」
「あ、島さん。どうかしたんですか?」
「ん…美晴先生、在席?」
「居られますよ。
 …島さん、怪我をしたの?」
「あ…俺じゃないよ。艦長が一寸…」
「…お父さんが?」

美雪の眉間が一瞬険しくなる。
彼女は父親との確執を抱えたままで
まだ心を開いている訳ではない。
必死に父親を理解しようとは努めている。
それは…傍で見ていて痛々しい迄に。

「又呑み過ぎて気分悪くしたんでしょ」
「又…って」
「最近よく二日酔いだ〜何だ〜って
 此処にお薬貰いに来てるもん」
「…そうだったのか」
「自分の健康管理位、確りして欲しいわ。
 艦長さんのクセにね」
「まぁ…それは言いっこ無しだよ。
 艦長は…代理の効かない、
 重責を与えられる身分なんだから…」
「島さんってさ…」
「ん?」
「お父さんに…甘いよね」
「え…?」
「駄目よ、そう云う所をお父さんに見せたら。
 あの人、甘えさせてくれる人には
 直ぐにベッタリしちゃうんだから!」

流石は愛娘。
その一言一句が全てに於いて手厳しい。

「俺は副艦長として、
 常に艦長を支える立場だからね。
 だが、今の忠告は
 確りと胸に刻んでおくよ」
「お願いね。だって、島さんが倒れちゃったら私…」

美雪は其処まで言い掛け、慌てて口を手で覆い隠した。
見る見る顔が真っ赤に染まっていく。
だが、次郎は少し笑みを浮かべただけで
それ以上の言葉を口にする事はしなかった。

「先生、呼んで来ましょうか?」
「あぁ…宜しく頼むよ」
「解りました!」

美雪は元気良く返事をすると
そのまま急いで医務室へと戻っていった。

* * * * * * 

「上条」
「はい!」

不意に後方から声を掛けられ
上条 了は勢い良く振り返る。

「俺は自室に戻ってるから
 何か有れば伝令を寄越せ」
「了解しました。
 あ、でも…」
「副長にもそう伝えておいてくれ」
「待たなくても良いんですか?」
「…あぁ」

古代はそれ以上の進言を拒んでいる。
無言の圧力が上条を襲い
彼は口を紡ぐしかなかった。

「解りました。島副長にもその旨、伝えます」
「頼む」

古代はそのまま艦長室へ。
それを見届けてから、上条も自分の席へ戻った。

「ふぅ……。何だよ、アレ?」
「何だか大変そうだな、上条」
「あぁ。郷田も見てたろ?」
「見てたよ。流石に俺じゃ艦長相手にして
 そこ迄は言えんな」
「俺、何か変な事言ったか?」
「それは大丈夫だと思うんだが…」
「だが、何だ?」
 だが…艦長は、俺達に言えない苦しみや悲しみを
 数多く抱えている筈だから…」
「…苦しみや悲しみ、か」

古代不在の艦長席付近に視線を向け、
上条は深い声で呟いた。

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SITE UP・2010.2.10 ©森本 樹


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