| Data.1-5 |
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「艦長室に戻ったっ?!」 第一艦橋に戻って来た次郎は 上条からの伝言を聞いて思わず声を荒げた。 「えぇ…。副長にはそう伝えろって…」 「…他には?」 「いえ…」 「全然?」 「はい。全く……」 「又か、あの人は……」 次郎は派手に頭を抱え込み、思わず溜息を吐いた。 「大人しく待っていてくれた験しが無い…」 「あの、副長?」 「何だ?」 「艦長なんですけど…何か、『逃げて』ません?」 「……」 「俺の気の所為なら、良いんですけどね」 上条の言葉に郷田 実や桜井は一瞬だが顔を顰めた。 最高責任者である古代に対し、 その部下である上条が「逃げている」と発言するのは 通常から考えても適したものでは無い。 寧ろ不躾なその言動は激しく叩かれる要因にもなる。 「…いや、逃げてるんだろう」 「副長……」 「逃げられるのならば、…な」 「……」 次郎は上条の洞察力に感心していた。 同時に、臆面無く自分に発言出来た事も評価していた。 『気の所為だと、思える内が華だ…』 上条の様に口に出しこそはしないが、 第一艦橋内のクルーだけでも そう思っている人数は多いだろう。 古代が逃げればそれだけ、 彼の味方が確実に減っていくのである。 それだけは、目に見えて明らかだ。 「上条、御苦労だったな。 艦長が自室に戻ったのであれば 艦長職務は俺が引き受ける。 何か有れば、随時報告する様に」 「了解しました」 上条は敬礼し、直ぐに自分の席に戻る。 艦長席から見て右側。 副艦長席に座った次郎は 古代が居るであろう艦長室の方向を 無言で見上げていた。 「ヤマトから入電。 無事、プロキオ星系に到着したとの事です」 地球連邦宇宙科学局の通信室。 真田 志郎はヤマトからの連絡を聞き、 少しだけ顔を綻ばせた。 「そうか。引き続き、探索を続けてくれと伝えて欲しい」 「解りました!」 「…プロキオ星系迄到達したんですね」 「……あぁ、何とかな」 真田の背後に立つ影。 その人影に対し、真田はゆっくりと視線を合わせる。 「なぁ…本気なのか?」 「…何がです?」 「いや…アレはまだテストもしていないんだ。 それをいきなり実戦投入するのは 余りにも危険な賭けじゃないのかと思ってな」 「真田さんならそう言うと思ってましたがね」 人影は笑みを漏らしている。 「スーパーアンドロメダ級戦艦では 対異星戦艦との相性が悪過ぎます。 艦体の性能に気を取られ過ぎだ。 船は人が動かすんです。だからこそ」 「しかし……!」 「同じ大和型の、ヤマトに匹敵するあの戦艦であれば… ヤマトを護衛するのに相応しいでしょう。 俺は、アンドロメダにヤマトを委ねるつもりは無い」 「……」 「搭乗者は各自準備を整えています。 ブラックパルサーの整備も整いました。 後は…発進するだけです」 「ヤマトを…追うんだな」 「はい。地球や、他の友好国を守る為にも ヤマトを落とす訳にはいきません」 「……」 「真田さん。いや…真田長官。 『宇宙戦艦ムサシ』の出撃命令を」 「…では、艦長には……を」 真田の言葉に人影は大きく頷き 敬礼で以って、辞令の受理を表した。 |