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机に飾られたフォトフレーム。 其処には愛する妻と、娘の姿が。 だが、俺に笑顔は無い。 やはり…笑えないのだ。 折角の家族写真だと云うのに 俺の表情と来たら、まるで【通夜】だ。 俺は徐にフレームを掴むと 中に飾ってある写真を取り出した。 家族写真の裏に隠されたもう一枚の写真。 最初のイスカンダルの航海から帰って来て ヤマトの甲板で撮った物だ。 帰還直後だから…19歳の時か。 俺と、雪と…大介の3人で撮った写真。 確か…佐渡先生がカメラを構えて 俺と大介は雪を挟んで無邪気に笑っていた。 俺は…こんな笑顔も出来たのか。 この頃は、楽しかった。 慣れぬ航海、命懸けの戦いの連続だったのに 寧ろどの旅よりも楽しかった記憶がある。 そして、無事に使命を達成し 俺達は遂に念願の故郷を取り戻した。 誇らしげな表情。 子供と大人の境界線に立つ俺達の笑顔は だからこそ、何よりも輝いて見えた。 「それなのに……」 もうアイツは居ないのだ。 この宇宙をどれだけ捜しても 島 大介は何処にも存在していない。 俺が宇宙へ逃げたのは… もしかすると、 未だに大介は宇宙に居て 俺の迎えを待っているに違いないと云う 実に身勝手で非現実的な願いの為だったのかも知れない。 何年経ったところで受け入れられないのだ。 それが俺達の繋がり…。 「ほら、進君。遠慮しないでもっとお上がりなさい。 次郎! これは進君の分なんだから…」 「早い者勝ちだよ、ね!」 「なら俺のをやるよ、古代」 「い…いや、俺は充分戴いて…」 「ウチじゃ遠慮する事なんて無いんだぞ、進君。 君はもう、ウチの息子なんだから」 「……有難う御座います」 「あれ、進兄ちゃん。泣いてるの?」 気が付くと俺はうつ伏せで ベッドに横たわっていた。 先程までの団欒の風景。 あれは…夢、だったのか? 島家の食卓。 おじさんとおばさんが居て、大介が居て、次郎が居て…。 俺は…おばさん手製のコロッケを次郎と取り合いして…。 全部…夢……? 「夢だ…。もう、大介は居ない…。 次郎だって…俺よりも立派に成長したんだ。 あの頃の無邪気で可愛い坊主なんかじゃない…」 憧れだった。いつか、夢見ていた家庭。 だが…俺には無理だった。 雪と築ける筈だった家庭も 蓋を開ければ冷め切った、仮面夫婦…仮面家族。 「もう…勘弁してくれよ……」 俺は泣いた。 枕にしがみ付き、嗚咽した。 |