Data.1-6

机に飾られたフォトフレーム。
其処には愛する妻と、娘の姿が。
だが、俺に笑顔は無い。
やはり…笑えないのだ。
折角の家族写真だと云うのに
俺の表情と来たら、まるで【通夜】だ。

俺は徐にフレームを掴むと
中に飾ってある写真を取り出した。

家族写真の裏に隠されたもう一枚の写真。
最初のイスカンダルの航海から帰って来て
ヤマトの甲板で撮った物だ。
帰還直後だから…19歳の時か。

俺と、雪と…大介の3人で撮った写真。
確か…佐渡先生がカメラを構えて
俺と大介は雪を挟んで無邪気に笑っていた。

俺は…こんな笑顔も出来たのか。

この頃は、楽しかった。
慣れぬ航海、命懸けの戦いの連続だったのに
寧ろどの旅よりも楽しかった記憶がある。

そして、無事に使命を達成し
俺達は遂に念願の故郷を取り戻した。
誇らしげな表情。
子供と大人の境界線に立つ俺達の笑顔は
だからこそ、何よりも輝いて見えた。

「それなのに……」

もうアイツは居ないのだ。
この宇宙をどれだけ捜しても
島 大介は何処にも存在していない。

俺が宇宙へ逃げたのは…
もしかすると、
未だに大介は宇宙に居て
俺の迎えを待っているに違いないと云う
実に身勝手で非現実的な願いの為だったのかも知れない。

何年経ったところで受け入れられないのだ。
それが俺達の繋がり…。

* * * * * *

「ほら、進君。遠慮しないでもっとお上がりなさい。
 次郎! これは進君の分なんだから…」
「早い者勝ちだよ、ね!」
「なら俺のをやるよ、古代」
「い…いや、俺は充分戴いて…」
「ウチじゃ遠慮する事なんて無いんだぞ、進君。
 君はもう、ウチの息子なんだから」
「……有難う御座います」
「あれ、進兄ちゃん。泣いてるの?」

気が付くと俺はうつ伏せで
ベッドに横たわっていた。

先程までの団欒の風景。
あれは…夢、だったのか?

島家の食卓。
おじさんとおばさんが居て、大介が居て、次郎が居て…。
俺は…おばさん手製のコロッケを次郎と取り合いして…。
全部…夢……?

「夢だ…。もう、大介は居ない…。
 次郎だって…俺よりも立派に成長したんだ。
 あの頃の無邪気で可愛い坊主なんかじゃない…」

憧れだった。いつか、夢見ていた家庭。
だが…俺には無理だった。
雪と築ける筈だった家庭も
蓋を開ければ冷め切った、仮面夫婦…仮面家族。

「もう…勘弁してくれよ……」

俺は泣いた。
枕にしがみ付き、嗚咽した。

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SITE UP・2010.2.25 ©森本 樹


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