Data.1-7

自室に篭って散々泣いたら少し気分が晴れた。
後は顔や体を洗い、服を着替えれば良い。
俺は艦長なんだから泣き顔など部下には見せられない。
只でさえ不安な航海の真っ只中だ。
艦長である俺が、彼等を追い詰めてはならない。

身体に叩き付ける激しい水音。
纏わり着く様な蒸気。
シャワー浴びながら、ボンヤリと思い出す。

事が終わってから、フラフラの俺を浴室へ運び
体の隅々まで丹念に洗ってくれた恋人。
中に出される事が多かったからか、
俺がどんなに申し訳無いと拒んでも
彼は優しく微笑み、キスをしながら
優しく掻き出してくれた。

触れてくれる指先が、唇が、とても愛しくて
何度も求めて…甘えて。
時間が無限に有れば、ずっと一緒に……。

「…大介、そろそろ戻るよ。
 俺の仕事は…まだまだ終わりそうに無いから」

着慣れた制服に袖を通すと自然と表情が引き締まる。
嘗ての偉大な艦長達に一歩でも近付く為、
部下達をこれ以上傷付けない為、喪わない為。

「大介、それに…大村さん。
 俺が強ければきっと、喪わずに済んだ。
 大切な人を、愛する男を守れなかった…
 それが俺の罪、そしてこの思いは俺の罰……」

胸の奥がグッと締め付けられた様に苦しくなる。
息が詰まる。また、涙が溢れてきそうだ。

「…行かなければ」

俺は思いを振り切る様にと頭を強く何度も振り
第一艦橋に戻る事にした。

* * * * * *

古代 進、と云う名前は良く知っていた。
子供の頃から彼は『伝説』とまで言われ
宇宙戦士訓練学校時代の教官が
よく「鬼の古代」と彼を呼んでは
懐かしそうに昔話を聞かせてくれた。

会ってみたいと思った。
戦乱の最中、家族を喪った俺にとって
古代 進と云う人の生い立ちは
聞けば聞くほど他人事には思えなかった。
彼だけは俺の寂しさを理解してくれると
何故か俺はこれっぽっちも疑わずに信じていた。

「お前は『鬼の古代』の恐ろしさを知らんからだ」
「そうは言っても北野教官。
 古代さんだって1人の人間でしょう?」
「確かに1人の人間だし、男だがな。
 あの人はそう云う所を超えた場所に立ってるんだ。
 いつだって、孤独にな……」
「…孤独、ですか」

この時に北野教官が洩らした
【孤独】と云う単語の意味を
当時の俺はまだ理解してはいなかった。
その孤独がどれ程迄に
重い意味を成しているのかを。
どれ程迄にあの人を苦しめているのかを。

実際に古代 進本人と、
そしてあの人の妻である古代 雪に会う迄は。

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SITE UP・2010.3.1 ©森本 樹


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