| Data.1-7 |
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自室に篭って散々泣いたら少し気分が晴れた。 後は顔や体を洗い、服を着替えれば良い。 俺は艦長なんだから泣き顔など部下には見せられない。 只でさえ不安な航海の真っ只中だ。 艦長である俺が、彼等を追い詰めてはならない。 身体に叩き付ける激しい水音。 纏わり着く様な蒸気。 シャワー浴びながら、ボンヤリと思い出す。 事が終わってから、フラフラの俺を浴室へ運び 体の隅々まで丹念に洗ってくれた恋人。 中に出される事が多かったからか、 俺がどんなに申し訳無いと拒んでも 彼は優しく微笑み、キスをしながら 優しく掻き出してくれた。 触れてくれる指先が、唇が、とても愛しくて 何度も求めて…甘えて。 時間が無限に有れば、ずっと一緒に……。 「…大介、そろそろ戻るよ。 俺の仕事は…まだまだ終わりそうに無いから」 着慣れた制服に袖を通すと自然と表情が引き締まる。 嘗ての偉大な艦長達に一歩でも近付く為、 部下達をこれ以上傷付けない為、喪わない為。 「大介、それに…大村さん。 俺が強ければきっと、喪わずに済んだ。 大切な人を、愛する男を守れなかった… それが俺の罪、そしてこの思いは俺の罰……」 胸の奥がグッと締め付けられた様に苦しくなる。 息が詰まる。また、涙が溢れてきそうだ。 「…行かなければ」 俺は思いを振り切る様にと頭を強く何度も振り 第一艦橋に戻る事にした。 古代 進、と云う名前は良く知っていた。 子供の頃から彼は『伝説』とまで言われ 宇宙戦士訓練学校時代の教官が よく「鬼の古代」と彼を呼んでは 懐かしそうに昔話を聞かせてくれた。 会ってみたいと思った。 戦乱の最中、家族を喪った俺にとって 古代 進と云う人の生い立ちは 聞けば聞くほど他人事には思えなかった。 彼だけは俺の寂しさを理解してくれると 何故か俺はこれっぽっちも疑わずに信じていた。 「お前は『鬼の古代』の恐ろしさを知らんからだ」 「そうは言っても北野教官。 古代さんだって1人の人間でしょう?」 「確かに1人の人間だし、男だがな。 あの人はそう云う所を超えた場所に立ってるんだ。 いつだって、孤独にな……」 「…孤独、ですか」 この時に北野教官が洩らした 【孤独】と云う単語の意味を 当時の俺はまだ理解してはいなかった。 その孤独がどれ程迄に 重い意味を成しているのかを。 どれ程迄にあの人を苦しめているのかを。 実際に古代 進本人と、 そしてあの人の妻である古代 雪に会う迄は。 |