| Data.2-11 |
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再び襲われる、暗黒の海。 朦朧とする。 混沌として、白濁した意識。 飲み込まれる。 今度こそ飲み込まれてしまう。 『くそ……っ!』 精一杯抗ってみても最早どうする事も出来ない。 荒い呼吸音が耳に届く。 だが、可能なのは其処迄だった。 「副長!」 中西の強い呼び声に、次郎は表情を強張らせた。 「どうした、中西?」 「通信機に反応有り。 鑑定している所ですが…これは…」 「…何だ?」 「皆に聞かせるのは…拙いです。 副長、インカムを装着して下さい」 「解った」 手渡されたインカムを素早く装着した 次郎の耳に届いたのは 苦悶の声を上げる古代と周囲の嘲笑であった。 瞬時に次郎は察知する。この状況を。 「…罠だったのか」 「副長…どうします…?」 「中西、奴等の出方を引き続き追ってくれ。 それ次第では戦わなければならないだろう」 「はい…」 「今はまだ動けない。 艦長が人質にされている状況では……」 「……」 「チャンスは必ず来る」 「副長…」 全身の血が逆流する程の激しい怒りを覚える。 此処迄何かを激しく憎み、怒りを顕わにした事は無い。 兄、大介でさえも 次郎の事は「温和な性格」とだけ評していた。 その彼が、静かに怒りを抑えている姿に 中西は底知れぬ恐怖を感じていた。 『あれ…は、なかなか綺麗なフォルムを…』 『コレクションに…似合う…』 『邪魔者を排除…我が物に…』 『ヤマト…そう云う……』 インカムから微かに聞き取れる会話内容。 奴等の狙いはこのヤマトを我が物にする事。 それも…飾り物として。 この一言で、次郎の怒りが限界を越えた。 インカムを静かに外して中西に預けると、 彼はそのまま艦長席に向かう。 艦長の代理として、副長として 彼は本格的に戦うつもりなのだ。 ヤマトと、古代を救う為に。 ガシャン 手から滑り落ちて割れた薬品瓶の欠片が 光を受けてキラキラと輝いている。 それが何とも言えず不気味で怖かった。 「美雪ちゃんっ?!」 異常に気付いた美晴がすぐさま駆け寄る。 「怪我は無い? 大丈夫?」 「だ…大丈夫です」 「顔色が悪いわよ。 疲れが出たんじゃないかしら? 少し休んだ方が良いわよ」 「だ、大丈夫です。本当に大丈夫。 只、少し……」 「只、何?」 「お父さん…どうしてるかな、って…」 「そう……」 普段彼女が見せる元気な瞳の色は何処にも無く、 美晴は美雪の異変を見守るしか出来ない事に 多少なりとも苛立ちを抱いていた。 |