| Data.2-13 |
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嘲笑に包まれながらも、体は自由にならない。 古代は無抵抗のまま、キューヴを体内に捻じ込まれた。 悲鳴は堪えたものの、余りの激痛に涙が流れてくる。 「私は慈悲深いのでな。 お前に時間を与えてやった。 お前の生命はキューヴが開花する迄の数時間だ。 精々恐れ戦くが良い」 「……」 絶望感に支配されたまま、古代は静かに目を閉じた。 後数時間、本当に自分は其処迄で終わりなのか。 諦めが心を侵食していく。 そんな時だった。 宮殿が大きく揺れた。 地震とは違う、もっとピンポイントな揺れ。 「何事だ?」 「また地下組織の連中か?」 「調べろ!!」 騒然とする部屋の中も無事ではなかった。 煙幕弾が投げ込まれたのだ。 「!!」 古代は瞬時に目を閉じ、煙から視力を守る。 すると、不意に誰かの力強い腕が 自分を抱え上げたのを感じ取った。 『誰…だ?』 力強く、逞しい腕の感触に思わず錯覚する。 『誰でも良い…。助けてくれたんだ、きっと。 大村さん? それとも、大介…?』 不安は無かった。 古代はそのまま、緊張の糸が切れてしまったかの様に 安心して静かに意識を手放した。 「副長!」 古代の発信機をずっと追跡していた中西は 宮殿内の異常をキャッチしていた。 「どうした?」 「ポインターが動き出しました。 平面上は判り難いのですが 立体画像で認識させれば…」 「地下に移動している…?」 「はい。もしかすると…」 「そうか、地下に別の種族が……」 「どうしますか、副長?」 「いずれにせよ、救命艇は出す。 地下の種族とはその時に対面するだろう。 彼等が信用出来るかどうかは解らないが…」 敵の敵は味方。 随分と御都合主義な発想ではあるが 古代の身柄を確保した彼等までが敵に回るよりも 共闘出来る相手であって欲しいと願うのは きっと、次郎だけでは在るまい。 「音はまだ『生きて』いるか?」 「はい、無事です。 どうやら誰にも悟られなかった様子で」 「そうか…。良かった……」 「今は艦長が何処に運ばれたのかを 奴等よりも先に見つけ出す事でしょうね。 それに、気になる事が……」 「何だ? 何か遭ったのか?」 奴等が【キューヴ】って呼んでいた物体…。 それがどうも艦長に使われた様です」 「キューヴ……?」 「キューヴが開花してしまうと… 艦長の命が尽きるとか、何とか……」 「……」 静かに動くポインターに目をやりながら 次郎はどうすれば良いのかを必死に思案していた。 |