Data.2-17

何か異質の気配が部屋全体を包み込んでいく。
しかし、嫌悪は無い。
寧ろ心落ち着くこの優しげな雰囲気は。

「レガシーの、意志よ」

デネボラの声に、古代は【意志の正体】を知った。
惑星レガシーは女性の姿に具現して
必要な情報や知識を今迄の間ずっと
愛する民に捧げて来たのだろう。
そうやって民を育み、守って来たのだろう。

その姿は…嘗て遭遇した【水惑星アクエリアス】の女王、
クイーン・オブ・アクエリアスの姿と酷似していた。

レガシーの意志は異星人である古代の存在を関知している。
尚且つ、その姿を曝したという事は…
事態はもう、一刻の猶予も許されていないのだろう。
彼女の齎す言葉の内容が更に深刻且つ急を要している事も
この点から簡単に推察出来る。

『私の愛する子達よ…。
 いよいよ、時は満ちました。
 レガシーの血を絶やす事無く、
 第二の母なる星に旅立つ時が』
「レガシーの意志よ!
 我々は貴女と共にこの地に残ると…」

『子達の更なる反映こそが我が最期の望み。
 生きるのです。
 恥辱を受けようとも今は生き延びるのです。
 そして、新たな悲劇を生み出さぬ様…』
「新たな…悲劇……?」
『異星からの友よ』

レガシーの意志はゆっくりと古代を見つめる。
古代もまた、視線を反らす事無く見つめ返した。
彼女は…間違い無く自分に、ヤマトに救いを求めている。

『悪しき魂、この血を滅ぼす侵略者の魔の手は
 刻一刻とこの宇宙に広がりつつあります。
 戦う力を持たず、悪に屈する民も存在している筈。
 友よ、どうか彼等を解放してあげて下さい。
 貴方々の勇気と、深い愛情で…』
「…勿論です、レガシーの意志よ。
 ヤマト艦長の名に於いても…
 必ず、この誓いは守ってみせます」
「古代殿……」

デネボラは肩を震わせて涙を堪えている。
宇宙を翔ける船を持たなかったレガシーの民は
それ故に滅びを選ぶしかなかったのだ。
消滅以外の選択肢が、確かに目の前に存在している。
そして、レガシーの意志がそれを望んでいる。

「デネボラさん…。
 我々と共に行きましょう。
 未来をこの手で掴む為に」
「……」

デネボラはまだ苦悩し続けている。
望む答えは見えている筈。
だが、その答えは咽喉で止まったまま。

『長、デネボラ』
「レガシーの意志よ、私は……」
『デネボラ、貴方に…
 第二のレガシー探索を命じます』
「…レガシーの意志よ」
『民の未来を…頼みましたよ』
「解りました、我が母よ…。
 必ず、必ずや第二のレガシーを……」

古代は静かにその遣り取りを優しく見つめていた。

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SITE UP・2010.6.17 ©森本 樹


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