Data.2-20

久々に見た空は…
随分と物騒に感じた。

戦乱を予兆させる宇宙に漂うヤマト。
その壮大な姿が勇気を与える。
新たな戦いに向けて、もう口火は切られた。

戻るのだ。
仲間達の元へ。
ヤマトの元へ。

「艦長!」

先陣を切って降りて来た小林の声が響く。
その声に促される様に
古代の視線も又、小林へ。

「小林…、よく来てくれた」
「話は後です、艦長。
 既にヤマトは臨戦態勢に入ってます。
 艦長、早く戻って指示を出して下さい」
「…慌てるな、小林。
 敵の出方が全く解らない今
 我々が優先すべきはレガシーの脱出だ」
「…艦長、そんな悠長な……」
「命令だ、小林。
 速やかに彼等レガシーの民を救命艇へ避難させ、
 無事 ヤマトに運ぶんだ」
「…了解」

古代には何か考えが有るのだろう。
自分の三手先は見ているだろう彼の言葉に
小林は素直に従うしかなかった。

今は一刻を争う。
その言葉の意味の重さも
何となく察知出来る。

自分よりも大柄なレガシーの民達を
何とか救命艇に誘導しながら
小林はこの先の戦いに意識を集中させていた。

* * * * * *

「艦長!」
「お帰りなさい、艦長!」
「良くご無事で…っ!!」

第一艦橋に着くや否や
次々と掛けられる言葉に満足な返答も出来ぬまま
古代は直ぐ艦長席へと腰を下ろした。

「じ…島、戦況は?」
「様子見なのか、硬直状態が続いています。
 敵はまだ動き出していません」
「では今の内にレガシーの大気圏外へ緊急離脱する」
「避難、ですか?」
「そうだ。機関長、波動エンジンの状態は?」
「はい、波動エンジンの準備も完了しています」
「そうか。ならば発進準備を急げ!
 場合に拠ってはワープを行う。
 そのつもりで挑め!」
「了解です。ワープ可能地点、算出開始!」

活気を取り戻す第一艦橋で
古代はふと後方の視線に気付いた。

心配だったのだろう。
いつの間にか其処には美雪が立っていたのだ。

「美雪…」
「……」
「レガシーの皆さんを、ホールへ案内してくれ。
 彼等にはゆっくり休める場所が必要だ」
「…はい」
「美雪、お前に彼等の事を頼みたい」
「…え?」
「雪と…お前のお母さんと同じ使命をお前に与える。
 古代 美雪。
 只今より、宇宙戦艦ヤマトの生活班長に任命する」
「……お父さん」
「レガシーの民は生活班に加入してもらう。
 彼等と力を合わせて、皆を支えて欲しい。
 …出来るな、美雪?」

思えば進が美雪に何かを頼む事は今迄一度も無かった。
それが、いきなりの【生活班長】抜擢。
然もその職は、母親である雪がずっと守って来た物である。

父親が自分を一人前として認めてくれたのだろうか。
いや、疑っている場合ではない。
チャンスを与えてくれたのだ。
ヤマトの一員と成れるかどうかの、チャンスを。

「古代艦長。
 古代 美雪、只今より生活班長の任を拝命します!」
「宜しく頼むぞ、生活班長」

力強く敬礼する愛娘に対し、
古代は静かだが温かな眼差しを送っていた。
同様に、振り返る事は出来ないまでも
次郎も又 この2人の遣り取りに安堵の表情を浮かべていた。

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SITE UP・2010.6.20 ©森本 樹


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