Data.2-5

「これが、プロキオ星系の勢力図になります」

全体会議室のパネルに映し出される星雲。
真帆の適切に言葉を選んだ説明が
静かな部屋に浸透していく。

「中央に在るのが惑星レガシー。
 生命反応が確認出来たのはこの星だけです」
「他の惑星には生物が居ないと言う事か」
「はい、艦長。データ上は」
「これだけ広大な星系でも…
 生物が存在出来る惑星は一つだけ……」

宇宙移民の難しさ。
それを良く知っているだけに、次郎は思わず呟いた。

「じ…い、いや…島副長」
「…はい? 何ですか、艦長」
「この感じだと…レガシーの文明レベルは把握出来そうか?」
「多分…可能だと思います」
「……」
「降りて、見ますか?」

もしこの星に雪が居れば、会えるかも知れない。
この星には生命反応が有るのだ。
此処に降り立ったのであれば、助かっている可能性は高い。

「そうだな…。
 着艦にはもう少しレガシーのデータが要るだろう。
 真帆、詳細なデータを副長に渡してくれ」
「了解しました、艦長」
「各人、レガシー着艦に備えておいてくれ。
 以上だ。解散!」

古代の号令に、皆がそれぞれ持ち場に戻っていく。
唯一人、モニターのレガシーを黙って見つめる古代。
そんな彼を見つめるもう一つの視線。

「…美雪?」

作戦会議に混ざっていたのは全く気が付かなかった。
近付く事も出来ず、近寄る事も無く。
一定の距離を開けたまま、言葉無く見つめ合う。

「美雪……」

何とか声を掛けようとしたその瞬間、
美雪は黙って会議室を後にした。
そっと伸ばした手は空しく漂うのみ。

「……」

古代はその手を静かに戻し、
再度レガシーを見つめていた。
火星に良く似た、赤い惑星。
其処に行けば、願いは叶うのだろうか。

* * * * * *

「木下!」
「はいよ、副長!」
次郎の声に、待ってましたとばかりの笑顔を浮かべる。

木下 三郎。
真田 志郎の秘蔵っ子としてヤマトクルーに選ばれた
有能な新技師長だ。
手先の器用さも然る事ながら、彼は発想が豊かである。
それ故に幼い頃より真田の目にかかり、
彼の英才教育を受けて成長してきた。

「例の物…出来たか?」
「あぁ、もうテストも済んでる。
 コレだよ、はい!」
「済まないな。助かるよ」
「中西にも話は通してある。
 スイッチの切り替えで、いつでも受信可能だ」
「…あぁ」

木下は大切そうに完成品を見つめる次郎に
思わず声を掛けていた。

「それにしても…凄いな」
「ん? 何がだ?」
「艦長の性格、よく知ってるんだな。
 一人で危険な場所に行きかねない人だから
 小型無線機を持たせておきたい…だなんて」
「でも、事実だろう?
 あの人は無防備で突撃しちゃうから…」
「あぁ。部下としては心配で仕方が無い」

木下の笑みに、次郎も苦笑で返していた。

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