Data.2-7

迎えの船がゆっくりと近付いて来る。
その様子を見ながら、
古代は自分の肩が少し震えている事に気付いた。

『怖気付いたのか…?
 俺らしくも無い……』

行くと決めたのは他ならぬ自分である。
どんな理由にしろ、決めたのだ。

『そうだ…。俺は知りたい。
 この先に在る未来を…この目で確かめたい』

よく見れば、握った拳に迄震えが到達していた。
この奇怪な現象は何だ。
未だ嘗て味わった事の無い、正体不明の感覚。

「艦長」

そんな古代の心を軽くしたのは
背後から聞こえてくる、聞き慣れたテノール。

「次郎…あ、いや…島……」
「今は…次郎でも良いですよ。
 此処には俺達以外誰も居ませんし」
「…済まん」
「あの…進、これ……」
「?」

次郎が手渡したのは、木下作の無線機だった。
ロケットペンダントの様な外見は
とても精巧に作られており、芸が細かい。
無骨な無線機とは縁遠く、これなら怪しまれないだろう。

「簡易型ですが、立派な通信機です。
 何か有れば、此処のスイッチを入れて下さい。
 これで其方側の状況と位置が確認出来ます」
「次郎……?」
「貴方を…1人で行かせるのは反対です。
 だけど…それしか活路を見出せないのであれば…
 俺は、どんな手段を用いても貴方を……」
「……」
「貴方を…1人にはさせない……」
「次郎……」

肩から余計な力が抜けていく。
手渡されたペンダントをそっと首に掛け、
古代は優しく微笑んで見せる。

「次郎…その気持ちだけで充分だ」
「進……」
「必ず俺は戻ってくる。
 それ迄…ヤマトを、乗組員達を頼むぞ」
「はい……」
「行ってくるよ、副長」
「艦長……」

いつもの癖で帽子のツバを下げそうになるが、
古代は苦笑を浮かべながらそれを制した。
堂々と在らねばならない。
莫迦になどされてなるものか。
自分は『宇宙戦艦ヤマト』の艦長なのだから。

* * * * * *

「俺は納得いかねぇ!」

第一艦橋で響き渡る小林の怒声。
深く頷いているのは上条、困惑しているのが桜井だ。
機関長の徳川 太助は何も言わず、遣り取りを見守るのみ。

「大体…どんな上から目線の発言だよ!
 会ってやるから艦長を一人だけ寄越せって…
 何様だって言いたいんだッ!!」
「小林…今からコスモパルサーで…」
「止せ」
「…機関長?」
「どうして、止めるんすか?」
「お前達、艦長の顔に泥でも塗るつもりか?
 どんな思いであの人が受諾したか、
 まるで理解出来て無い様だな」
「しかし、機関長…」
「小林。コスモパルサーの発進は
 副長の許可無しでは不可能だからな。
 肝に銘じておけ」
「な…何でですか?
 俺はコスモパルサー隊の…」
「艦長不在時、代行は島副長だ」

徳川の鋭い声に、小林は何も言い返せなかった。
歯噛みし、拳を握り締める。
それは又、上条も同じではあったが
彼の視線はモニターに浮かぶジェラ=ディに注がれていた。

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