| Data.3-10 |
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嵐の様な時間から、静寂の時間へ。 美雪は疲れてしまったのか、 ボンヤリとした表情のまま 次郎の肩に頭を預けていた。 次郎の方もそれを微笑ましく見つめている。 そんな静かな、2人だけの時間が やがて終わりを迎える。 古代が目を覚ましたのだ。 「…此処、は…医務室……?」 「そうだよ、お父さん。 今は絶対安静だから、動いちゃ駄目」 「美雪……?」 「もう大丈夫。キューヴはやっつけたから。 ね、島さん」 「次郎…お前が……?」 異生物の体液に汚された 次郎の制服はそのままである。 古代はその有様から どれ程の戦いが繰り広げられたのかを 容易に察する事が出来た。 次郎は自分を守り抜いてくれたのだ。 兄、大介に負けず劣らず。 そして彼は愛娘の美雪をも守ってくれている。 「有難う…次郎……。 何度礼を言っても足りない位だ……」 「止めて下さい、そんな他人行儀な。 俺達の仲ですよ、当たり前じゃないですか」 「……」 元々から家族ぐるみの付き合いをして来てるのだから 何も次郎の発言に疾しい物は無い。 だが、思わず的外れな事を連想し 瞬時にその浅はかさに自分で呆れ返りながら 古代は苦笑を漏らしてしまった。 しかし、今の彼には少しの笑い声も毒である。 「う…つぅ……」 「ほら! 言わんこっちゃない!!」 「な、情けないなぁ…これしきの傷で……」 「もう歳なんだから意地張らないで。 ちゃんと治さないと、皆が迷惑するでしょ?」 「皆…。そうだな……」 古代の瞳に、艦長としての威厳が戻る。 「島」 「はい、艦長」 「現在地、掴めてるか?」 「はい。現在はトレイス星系に居ます。 惑星レガシーの存在したプロキオ星系より 12万光年も離れたとデータには出ましたが それ以上の情報は手元に有りません」 「トレイス星系…か」 レガシーの意志が加護してくれたであろう事は 古代にもよく理解出来た。 一先ず、ヤマトは助かったのだ。 「この星系の事は、我々が独自で探るしかない」 「はい。真帆には既に情報分析の指示を出しています」 「そうか…」 以前から考えていた。 そう、それは自分が初めて艦長代理に就任した頃から。 自分よりも相応しいとさえ思われたあの男は 結局、最期まで自分を補佐する任務を全うした。 しかしそれは本当に正しかったのだろうか?と。 あの男はもう、此処には居ない。 償いたくても、償えない。 ならばその遺族に償うしかない。 償うだけ? いや、違う。 誰よりもその可能性を信じ、成長を見つめていたい。 自身の尊敬する…偉大なる沖田 十三の様に。 「島」 「はい」 「只今から島 次郎を正式に【艦長代理】と任命する」 古代の発言に次郎と美雪を顔を見合わせ、 そのまま言葉を失った。 |