Data.3-2

「艦長、プロキオ星系に異常数値が出ています!」

ムサシ第一艦橋で響き渡る澪の声に
クルーの動きが止まった。
現時点では大ワープを敢行しても
プロキオ星系までは辿り着かない。
否、それ以前に何かが生じた場合
ワープすら出来ない可能性まで浮上してきたのだ。

「艦長……」
「北野、このまま操舵を続けろ」
「しかし…」
「ワープポイントに入り次第、
 大ワープを敢行する」
「…了解しました」
「……」

艦長席に座る男は
身動ぎ一つしなかった。
異常数値の事も、未来の事まで
この男は見通しているかの様な態度だ。

底知れぬ冷静沈着さ。
それ故、人間離れしている様にも感じる。

「南部」
「はい、艦長」
「戦闘班の訓練は何処まで進んだ?」
「一通りの戦闘ならこなせる筈です。
 後は実戦で覚えていくしかないでしょう」
「そうか」
「はい…」

ムサシはその設計上、ヤマトよりも攻撃面で劣る。
乗組員の質も然る事ながら
艦首波動砲がヤマトの6連発可能型とは違い、
1発しか放てないのだ。

だからこそ、鍛えなければならなかった。
無い物は強請っても仕方が無い。
有る物で補うしかない。
ムサシの乗組員はそれ故、ヤマトより不遇とも言える。

「ブラックパルサー隊はどうだ、坂本?」
「順調です。まぁ、俺と揚羽でフォローはしますが」
「第三部隊は?」
「山本の班ですね。若手で揃えましたが、なかなかですよ」
「そうか」
「えぇ。山本と加藤はそのままヤマトにも乗り込めましたが
 アチラには小林が配属されてましたからね。
 手元に残しておいて助かりましたよ」
「おい、坂本。余り愚息を褒めるな」
「あ…山本先輩……」

苦笑を浮かべながら第一艦橋に現れたのは
今では現役を退き、教官の道を選んだ
嘗てのエースパイロット、山本 明だった。

「あの軟弱者がブラックパルサー隊の隊長とは。
 お前の目は節穴か、坂本?」
「俺の目に狂いは無いですよ、先輩。
 自信を持って宣言出来ます」

坂本は一歩も怯む事無く言い返している。
自身も又、教官として長年生徒達を見ていた。
その中でも小林、山本、加藤は別格の存在だったのだ。

「小林の部隊に組み込むと
 山本と加藤の威力が半減してしまいますからね。
 あの2人は抜群のコンビネーションを発揮しますから」
「ガキの頃からの腐れ縁だからな」

山本 明と坂本の会話を、ムサシ艦長であるこの男は
やはり微動だにせず黙って聞いている。

ヤマトクルー経験者であれば誰もが参加するであろう昔話も
この男にとっては別の意味を成しているのだろうか。
それは…この男だけにしか判らない事である。

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SITE UP・2010.10.15 ©森本 樹

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