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「そう言えば、艦長」 「ん? 何だ」 「医務室に来て下さいって伝言ありましたよ。 至急だそうです」 「そうか。解った」 ムサシ艦長はそのまま、帽子を直し 第一艦橋をゆっくりと後にした。 「ん? 山本先輩、何が…?」 「定期的な健康診断だよ」 「こんな時に、ですか…?」 「こんな時こそさ。 艦長は余り体が丈夫じゃないんでね。 休める時は休養を取り、時間が有れば健康診断」 「大変そうですよね…」 「なら、艦長のご負担にならない様に しっかりと働けよ、土門」 「も、勿論です!!」 澪は黙って艦長の後姿を見送るのみ。 外見年齢よりは高い身長だが 屈強の漢達が揃うこの戦場に立つには 余りにもその身は細く、か弱く見える。 「…叔父様」 感極まり、澪は思わず口にする。 彼の本願は知っている。 だからこそ、それを叶えたい。 それが彼女の、望みでも有った。 「おぉ、来たか。待ち侘びたぞ」 医務室から聞こえる元気な声に 艦長の表情が少し綻んだ。 「定期健診ですか? それとも…」 「無粋な事を言うな。 ほら、杯じゃ。取れ」 「精神面のメンテナンス、ですよね」 「そうじゃ。ほら、お前は呑める口なんじゃから」 「…戴きます」 「おぉ、呑め 呑め」 畳敷きの医務室。 旧ヤマトとまるで変わらない内装と、住人。 佐渡 酒造は愛猫ミーくん、 そしてアシスタントとしてアナライザーを このムサシに同乗させていた。 一度は戦場を退いた佐渡ではあったが、 真田の強い要望により乗船を決意したのだ。 「真田長官から、アナライザーの弟分も預かりました」 「あぁ、あの青い奴じゃな」 「はい。それなりに仕事は出来そうです」 「そうじゃなきゃ、困るじゃろうが」 「そうですね。工作班は正直、苦戦してます。 新米一人ではフォローし切れませんから」 「…お前さんも、余り一人で背負い込むんじゃないぞ」 「佐渡先生……」 「心中、穏やかではなかろう。 しかし…この船の乗組員は、 少なくとも第一艦橋の面々は お前さんの事を良く理解しておる。 大丈夫じゃ、お前さんには味方が付いておる」 「……」 「古代に、会うんじゃろう? ならば希望を捨てるんじゃない。 この船で、必ず古代に会うんじゃ!」 心中は確かに穏やかではなかった。 第一艦橋で昔話が盛り上がっても 唯一人、蚊帳の外を味わう事になる。 自分には…【記憶】が無いのだから。 「お前さんの記憶は… 脳味噌ではなく、体に刻まれておる。 必ず思い出せるぞ、な」 「…はい」 艦長の目は、静かに何かを追っていた。 自分の中に眠る唯一つの記憶、 【古代 進】の面影を。 |