Data.3-4

今現在手元にある資料を凝視し、
古代は脱出ルートを割り出していた。

惑星が滅ぶと云う事。
その破壊力が齎す影響。
何処が安全なのか。

そして…。

『せめて…その最期を見守る事が出来れば…。
 このまま逃げるのが一番の得策だと
 解っている筈なのに……』

レガシーを背にして逃げ出す事への抵抗感が
古代の心に訴えてくるのだ。
艦長として、一番理想的な選択肢とは
一体何なのだろう。
そして人間として、一番理想的な選択肢とは…。

「艦長、来ますっ!!」

上条の叫びに、慌てて視線をメインモニターへ移す。
戦艦の規模はそれ程巨大ではないものの
それでも軽くヤマトの3倍はあるだろう。
確かに、巨大戦艦である。

『ヤマトだけで、撃ち落せるのか…?』

誰しもの胸に去来する考え。
まともに遣り合って、勝利は掴めるのだろうか。
それとも、まるで歯が立たずに
宇宙の藻屑と消え去るのか。

「島! 緊急退避っ!!」

第一艦橋に古代の声が響き渡る。
宇宙戦士としての本能が【避難】を選択させたのだ。

「何をしている、島!
 急いでヤマトを避難経路に乗せるんだ!!」
「は…はいっ!」

次郎は未だ嘗てこれ程はっきりと【島】と呼ばれた事は無い。
古代は確かに自分を指して呼んだのだろうが
何処かでそれは【兄】を呼んでいる様にも感じていた。
此処に居るのは、確かに弟である自分の筈なのに。

『いや、そんな事はどうでも良い。
 今は緊急を要するんだ…』

操縦桿を握り締め、強く自分に引き寄せる。
その感触だけで空間の微妙な歪みが感じられた。

「これ…は…?」
「どうした、島」
「空間湾曲…? しかし、何故……」

『艦長! 時空の歪が生じている為
 この地点からのワープは不可能です!!』

第三艦橋から伝えられる真帆の伝達は
或る意味絶望的な内容であった。
ワープ航法で危険ブロックから一気に抜けるのには
やはりタイミングが遅かったのである。

「ならば出来るだけレガシーから離脱するんだ。
 惑星消滅の際に生じるブラックホールの出現ポイントを
 今から検索する事は可能か、真帆?」
『はい、現在検索中です』
「急いでくれ」
『了解しました』

衝撃波を乗り越えられるかどうかは
航海長である次郎の手腕に掛かっている。
兄、大介の腕ならば乗り越えるであろう危機だが
正直、古代はまだ 次郎の能力を理解し切れていない。

だが、『理解出来ない』のと『信じられないの』とでは意味が違う。
古代は信じていた。
次郎ならばやってくれると。

[3]  web拍手 by FC2   [5]



SITE UP・2010.11.2 ©森本 樹

目次