Data.3-5

ヤマトの艦体が大きく揺れる。
レガシーの変調を受け、空間湾曲が生じ
僅かながらではあるが
衝撃波と呼ばれるものが存在しているのだ。

「くぅ……っ!!」

舵を取る手に力が篭る。
まるで動かなくなった操縦桿の重さに
次郎は益々焦りを感じていた。

「副長…」
「…上条?」
「手伝ってやるよ」

左の操縦桿に上条の手が掛かる。
そして息を合わせ、
思い切り手前に操縦桿を引き付けた。

ヤマトの艦隊が少しだが安定し、
舵も随分と自由が利くようになったのは
乗組員全員が感じ取った事である。

「……」

古代は2人の姿を感慨深く見つめている。
そして、思い出していた。
最初の航海、イスカンダル星へ向けて旅立ったあの頃。
オクトパス星団を抜ける時、
やはり同じ様に力を合わせた事を。

『大介……』

今、此の艦に彼の姿は無い。
だが…先代航海長の思いは
今も尚、ヤマトと共に在るのかも知れない。

『お前が生命を賭けて守り抜いた船…。
 今度はお前の弟が、同じ様に守ってくれている』

古代は確信していた。
大丈夫だ、このヤマトは沈まない…と。

* * * * * *

「レガシーの意志よ、我が母よ…」

デネボラやレガシーの民達の祈りの声。
美雪はその思いを真直で感じ、心を痛めた。

地球人で此処迄母なる惑星に対し
心を砕き、思いを馳せた人間が居ただろうか。
その危機に際し、地球を離れた者の
なんと多かった事か。

「どうして…地球は助かったのに…
 この人達の惑星が失われなくてはならないの…?」

余りにも理不尽な現実。
それに抗いたくても術の無い自分に
美雪は言い切れない苛立ちを抱えていた。
悔しさは涙に代わり、頬を濡らす。

「我が母の願い…我等が一族の存続…。
 必ずや、新たな惑星に
 我が一族の繁栄を叶えましょう」

デネボラの祈りの言葉が静かに響く。
その祈りを、願いを、誓いを
美雪も又、共に捧げていた。

* * * * * *

レガシーの重力圏から少しずつ離れていく。
小さくなっていく、惑星レガシー。
古代の目は、それでもレガシーと
惑星に狙いを定めるが如く留まっている
不気味な巨大戦艦を視野に納めていた。

無慈悲に撃ち抜かれた惑星の数々を
古代の両眼は確りと見つめて来ている。

やがて戦艦の艦首部分が妖しく煌き始めた。

「島! 加速しろ!!」
「はい! 機関長、エンジンは?!」
「波動エンジン出力120%!
 フルに使えば逃げ切れる! 副長、頼む!!」
「了解! 最大出力で緊急離脱っ!!」

その時は来る。
もう、間も無く。

『必ず、逃げ切ってみせる。
 そして…この屈辱は決して忘れない』

古代は奥歯を噛み締め、
転送されたヤマトの脱出ルートを
睨み付けていた。

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SITE UP・2010.11.9 ©森本 樹

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