| Data.3-8 |
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美晴は彼女と共に医務室前の廊下で待機していた。 時折部屋から響いてくる断末魔の悲鳴。 苦痛に満ちた呻き声。 幼い頃に一度だけ体験した 進の、夜中の絶叫を思い出し、 美雪は知らず知らずの内に震えていた。 「美雪ちゃん…。 無理はしない方が良い。 此処から離れて、他の部屋で待機を…」 「…いえ、私は…逃げません。 だって…お父さん、戦ってるんだもの」 「美雪ちゃん……」 「私は…古代 進の娘だもの。 これ位の事で逃げていたら… きっと、お母さんに笑われちゃう」 「……」 何時だって本音でぶつかれなかった父と娘。 擦れ違いばかりの中で それでも、美雪はずっと進を追い駆けていた。 父親としての進を求め、振り向いて欲しかった。 そして…自分と母に見せて欲しかった。 本当の【古代 進】の姿を。 「お母さん……。 お父さんを守って、お願い……」 祈るしか出来ない事は解っている。 だが、祈るという手段だけでも 残っているのであれば。 もう二度と一人ぼっちの寂しさを味わいたくは無い。 美雪も又、古代 進と雪の娘として 自ら戦う意志を固めたのである。 どの位時間が経過したであろうか。 進の叫び声が全く上がらなくなり 誰かの会話がボソボソと聞こえてくるだけ。 しかしその会話内容までは聞き取れず 美雪の心に不安の影が広がっていく。 その時だった。 「コスモガン?」 確かに医務室内で誰かが コスモガンの引き金を引いたのだ。 所持しているのは次郎しか居ないのだから 恐らく撃ったのは彼であろう。 問題は【何を撃ったか】である。 間に合わなかったのか。 父は助からなかったのか。 それとも…。 「!!」 「み、美雪ちゃんっ?!」 美晴の制止を振り切り、 美雪は医務室に飛び込んで行った。 次郎の制服は赤紫の液体によって 染め上げられていた。 血飛沫、だろうか。 その飛沫は彼の頬をも汚している。 だが、不思議と彼の表情は穏やかで 嵐が去った事を物語っていた。 「島…さん……?」 「美雪ちゃん? どうして此処に?」 「コスモガンの音がしたから… それで、その…私……」 「お父さんの安否が心配になって 入って来ちゃったって…訳だね」 「ご…御免なさい……。 立ち入り禁止だって言われていたのに…」 「良いんだ。もう終わったから」 「えぇ、班長。 このイーグァー、務めを果たしました。 古代艦長は、もう大丈夫です」 「……本当に?」 恐る恐る病床に近付いてみると 進は疲労感こそ漂わせてはいたが 安心した表情を浮かべて 静かな寝息を立てていた。 |