Data.4-12

夢を見ていた様な気がする。

此処は…ムサシの艦長室。
今は他に誰も居ないこの部屋で
俺は只、ボンヤリと
宇宙空間を見つめている。

多少未来が読めると云うだけで
こんなにも危険な旅を
多くの乗組員に強いている。
時々、その事実が重圧となり
俺の思考を支配する。

「艦長?」

扉の向こう側から声が聴こえてきた。
澪の声だ。
何の用だろうか。

「失礼します」

どうやら今は彼女一人の様だ。
土門を連れ立ってないのも気に掛かる。
緊急事態でも生じたか。
ならば通信が有る。
だから、それも違うだろう。

「どうした?」
「佐渡先生からの伝言です。
 少しは休んで下さい、と」
「…眠っていたよ」
「どの位ですか?
 艦長室に戻られてから
 30分も経っていないですよ?」
「…正味、10分程度かな」
「やっぱり…」

澪は深く溜息を吐いている。
何故彼女が溜息を吐くのか
皆目見当がつかない。

「一人にしておくと
 絶対に眠ってくれないんだから…」
「…済まない」
「此処数日、ほぼ寝てない状態でしょう?
 適度な睡眠を保つ様に
 佐渡先生からも厳しく言われてます」
「解っては、いる」
「…不安、ですか?」

澪の視線を感じる。
逸らしていても、解る。

「……」
「艦長…」
「不安、か…」
「えぇ……」
「……」
「艦長…」
「そう、かも知れないな」

深く被っていた帽子を取り、
ゆっくりと机の上に置く。
手先が若干震えた。
緊張しているのが
自分でもよく判る。

落ち着く事が出来ない。
冷静になる事が困難である。
焦りなのか、苛立ちなのか、
それすらもハッキリしない。

下唇を強く噛み、感情を押さえ込む。
そんな動作だけが巧くなる。

「…何か飲みます?
 温かい物でも用意しましょうか」
「あぁ…それなら、レモンティが良いな」

俺の提案に対し
澪は一瞬だが微笑を浮かべた。
微笑の意味が解らず、言葉を飲み込む。

「竜介から美味しいレモンティの作り方
 習ってますから御安心を。
 進叔父様もお気に入りの味なんですよ」
「……」

古代、進…か。
俺の記憶に唯一残っていた単語。
それが或る人物の名前だと云う事、
どう云う人物なのか、
そして俺との繋がりは…
データベース上では
大体把握出来ている筈なのに…
それでもやはり一切は不明のままだ。

「取り戻せるのだろうか…?
 俺は、俺自身を……」

古代 進に会いさえすれば…
全てが判明すると云うのだろうか。
古代 進との関係性、
そして…俺の正体も……。

それすらも未だ何一つ判らないのだ。

強化硝子越しに映る自分の姿を
俺は無言で見つめるしかなかった。

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