Data.4-13

硝子越しの自分の姿は何処か滑稽に見える。
周囲に促されるままに此処まで来た。
記憶の無い自分にとって、判断材料になる物は無く
人の会話とデータベースから
【知識】と云う形で拝借していくしかない。

俺は誰なのか。
その答えを、俺以外は知っていると言う。
だが、俺自身がそれを正解だと導き出せない。

温かなレモンティで咽喉を潤しながらも
俺はずっと考え続けていた。

自分が何者なのか、を。

「艦長…」
「今は【叔父様】でも良いよ、澪」

そう声を掛けると、彼女は顔を綻ばせた。
嬉しそうな表情を見る事で、
そうすれば彼女が喜ぶ事を知ったのは…極、最近。
周りの様子を察知し、それに合わせる事で
俺は彼等の望む【形】を演じているに過ぎない。
其処に【俺】は存在しているのだろうか…?

澪の面影は、あの人に似ている。
本当の俺を見抜いたと、彼女は微笑みながら言った。
そして…俺の言葉を受け入れ、死地に赴いていった。
俺の見た【未来図】を…信じて……。

「叔父様…泣いているの?」
「…いや」
「でも…涙が……」

紅茶の水面が波打っていたのはその為か。
自分が涙を流せるなど思いもしなかった。
まるでロボットの様に
予め決められた動きしか取れない筈なのに。

「叔父様、一人で苦しまないで」
「澪…」
「必ず、解るから。貴方が知りたがっている事。
 進叔父様と会えれば、必ず掴み取れるから」
「俺に…果たして、その資格が有るのかな」
「叔父様…?」
「古代 雪が第一次移民船団の責任者になった
 経緯は知っているだろう?」
「…概要は、真田のお父様から聞いています。
 でも……」
「彼女はギリギリ迄 拒んでいたんだ。
 自分自身の家族の為に、娘の為に。
 そんな彼女に無理強いをさせたのは…俺の責任だ」
「叔父様……」
「古代 進が真実に辿り着いた時、
 俺を許すとは思えないよ…」

許しが欲しくて、俺は彼と面会したいのだろうか。
自分の発言に、我ながら滑稽で苦笑が漏れる。
澪はそんな俺の動作に疑問を抱いている様だ。
首を傾げ、心配そうに此方を見ている。

「安心してくれ、澪。
 任務はちゃんと遂行するさ」
「私が心配なのは…」

一瞬、視線を逸らし 澪は続けた。

「叔父様、貴方が消えてしまわないかって事だけ」
「澪…?」
「叔父様は叔父様のままで、今の叔父様のままで良いの。
 だから…消えてしまわないで。お願い…」
「消えないよ。大丈夫、俺は此処に居るから」
「叔父様…」
「何処にも行かない」

何処にも、行けないから。
俺の居場所は、ムサシにしかないんだ…。

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